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書評・高坂正尭著 『世界地図の中で考える』 岡部陽二

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 高坂正尭君とは中学・高校・大学を通じて、勉学と遊びの友であった。運よく彼と私の二人だけが洛北高校から京大法学部へ現役で合格した。その直後に当時の青柳英夫校長先生から、京都一中の同窓会との合併を急ぎ具体化してほしいと頼まれ、高坂君が中心となって一中側の永末英一会長と交渉を進めた。彼の指導力で、同じ校舎で学んだ京一中との合体が早々に成就したのは思い出深い。

 この本は彼の単著としては4番目に書かれた初期の作品であるが、すぅっと頭に入り、50年前の著作とは思えない。国際政治の動きを歴史的な視点だけでなく世界地図という面の広がりにも目を向けて見なければならないことの重要性がよく分かる。

 1965年に半年間交換教授として留学したオーストラリアのタスマニア大学での体験からのイントロダクションは、結核を主とする感染症をイギリス人が持ち込んだため原住民が絶滅した物語である。イギリス人は流行の繰り返しでそこそこの耐性を備えていたが、現地人にはなかったといった観点からの分析は、コロナ・パンデミックにも通底するところがあり興味深い。

 彼は一番前の座席に陣取って猪木正道教授の講義を聴いていた。その恩師が「文字通り一気に読み通した。そしてこの書物の面白さと、密度の高さに驚くとともに、今さらながら高坂正堯氏の国際政治学者としての実力に舌を巻いた」と激賞した。この逸話はいまだに語り草となっている。

    行春や見れば見るほど世界地図  陽二

 発行所 新潮社 新潮選書 2016年復刻版 本体1,400円 Kindle版1,232円(291頁)

(2021年8月10日発行、京一中洛北高校同窓会誌「あけね」第59号、p28所収)

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