本年(2016年)2月17日にロイヤル・メール(Royal Mail)創設500周年を記念した6枚の単片記念切手(上掲)と4枚の記念切手シート(下掲)が発行された。
切手の図柄は左上から右へ順に次のとおり。
1、ブライアン・チューク男爵(Sir Brian Tuke);
チューダー王朝第2代のイングランド王・ヘンリー八世により、1516年に初代の郵政長官(Master of the Posts)に任ぜられ、王政郵便(Royal Mail)を創設したとされる人物。
2、郵便船(Packet ship);
17世紀から沿岸を運航して郵便物の運搬を行なった専用船。
3、ペンフォールド型郵便ポスト(Penfold pillar box);
1859年に郵便ポストの形が"National Standard boxes"に統一され、デザインは随時変更されることとなった。John Penfoldによってデザインされたこの八角形のポストが中でも有名で、長く使われた。
4、河川や運河を利用した郵便の集配業務(River post);
美貌の女性集配人がモデルとなっている。
5、郵便馬車(Mail Coach);
英国では1784年から、1840年代以降に順次鉄道網に置き換えられるまで、100年間にわたり郵便物を輸送するため荷馬車が用いられ、これがメール・コーチと呼ばれた。
6、メッドウェイ・メール・センター(Medway Mail Centre);
英国南部のケント州・ロチェスターにある5.4ヘクタールの広大な敷地に建設された太陽熱発電で操業されている近代的な集配センター。70百万ポンドをかけて2012年に完成、一日3百万通の郵便・小包を取り扱う。
下掲の切手シートには、郵便博物館に保存されている過去の広報ポスターの中から"Quickwst Way by AIR MAIL, Ask at your nearest Post Office"(1935年)、"ADDRESS your letters PLAINLY"(1942年)、"Pack your percel carefully"(1950年)、"STAMPS in BOOKS save time"(1960年)の4枚が図案に選ばれた。
郵便制度の発足は「ペニー・ブラック」切手が発行され、英国内全国均一料金で書簡を送れるようになった1840年と理解されている嫌いもある。しかしながら、郵便事業は切手の導入前から重要な役割を果たしており、今年でちょうど創設500年と、切手の歴史と比べると3倍ほど長い。
ロイヤル・メールの歴史はヘンリー八世が郵便長官の職を新設してブライアン・チューク男爵をこの職に任じた1516年に遡ることができるとして、ロイヤル・メール・グループは盛大な記念イベントを今年展開した。
創設当初のロイヤル・メールはもっぱら王室の情報伝達を職務としていたが、1635年7月31日にはチャールズ一世によっ一般人も利用できるように民間に開放され、1660年にはチャールズ二世によって郵政省(General Post Office)が設立された。
その後は行政府の一部門として運営されてきたが、1969年には政府の省から公社へと改組され、郵政大臣のポストは廃止された。
2002年には名称を"Royal Mail Group plc"とし、郵便物を配達する「ロイヤル・メール」、小包を配達する「パーセル・フォース」、全国的な郵便局のネットワークを管理・運営する「ポスト・オフィス・リミテッド」の3事業部門に再編された。3部門ともに黒字化して、2013年には株式が民間に公開され、ロンドン証券取引所に上場を果たした。
2006年に郵便事業は完全自由化され、ロイヤル・メールは350年にわたって保持してきた独占権を失った。
ロイヤル・メール500年の歴史の詳細については
http://www.royalmailgroup.com/500-years-history-delivered-your-doorstep
を参照していただきたい。