英国の国立公園の歴史は比較的新しく、1949年に制定された「国立公園と田園地帯へのアクセス法」に基づき、1951年に「ピーク・ディストリクト国立公園」がその第1号として指定され、引き続いて、湖水地方、ダートムーア、スノードニア国立公園が誕生、現在、計15の国立公園が存在する。
2021年は第1号指定の70周年に当たり、これを記念して10種の記念切手(すべて額面"1st"、翌日配達の速達便用で現在76ペンス・約102円)が2021年1月5日に発行された。
現在、国立公園は、イングランド、スコットランド、ウェールズの10%を占め、田舎を一般の国民に開放する目的を果たしている。
因みに、日本には現在34の国立公園があり、国土面積に対する割合は5.8%となっている。
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1、ダートムーア(Dartmoor)国立公園
イングランドのデボン郡に広がる湿原地形の地域をカバーする国立公園。この地域の多くは泥炭の厚い層に覆われており、雨水を速やかに吸収し、ゆっくりと分散していくので湿原とは云えほとんど乾燥している。
2、ニューフォレスト(New Forest)国立公園
イングランドのハンプシャー市、サザンプトン市に近い。国立公園内には丘陵が点在し、原生的な森林やヒースの原野のほか、沼沢や小川、牧草地、さらには自然の海岸線などで景観が形作られている。1079年にノルマンディー公ウイリアム一世が鹿狩りなどを行う狩猟地として設けたのが始まりとされている。
3、湖水地方(Lake District)国立公園
湖水地方はイングランドの西北部、カンブリアに位置する。氷河時代の痕跡が色濃く残り、渓谷沿いに大小無数の湖が点在する風光明媚な地域で、イングランド有数のリゾート地・保養地としても知られる。
そのほとんど約2,300平方キロメートルが1951年に国立公園に指定された。英国全体でみても、スコットランドにあるケアンゴーム国立公園に次いで2番目の広さを誇る。2017年には世界遺産に登録された。
地域内のアンプルサイドには、詩人・ワーズワースが晩年を過ごした屋敷が保存されており、ピーターラビットの作者・ビアトリックス・ポターが住んでいた町には博物館が建てられている。
筆者は在英中に数回訪れたが、真冬の雪景色の景観も素晴らしく印象に残っている。
4、ロモンド湖・ザトロサックス(Lake Lomond and the Trossachs)国立公園
この国立公園はスコットランドのグラスゴー大都市圏の北に位置する南部高地の西部に広がり、多くの山や湖がある。境界線の長さは約350 kmあり、ベン・ローモンドほか21の山と20の小山が含まれている。
5、スノードニア(Snowdonia)国立公園 (ウエールズ語;Parc Cenedlaethol Eryri)
ウエールズ北西部の山岳地帯にあり、中心にはスコットランドを除く英国において最も高いスノードン山がある。1896年に完成した登山鉄道が頂上まで7.5キロを運行している。
下段左から
1、ノースヨーク・ムーアズ(North York Moors)国立公園
イングランド北東部、ノースヨークシャー郡にある国立公園。ムーアとよばれる荒野が広がり、夏にはヒースの花で覆われ、野性的で広大な自然景観で知られる。公園内を南北にノースヨークシャー・ムーアズ鉄道が、東西にエスクバレー鉄道が通っている。
2、南ダウンズ(South Downs)国立公園
イングランド南東部の英仏海峡にほぼ沿ってハンプシャー郡中部からウエストサセックス郡を経て、イーストサセックス郡南端のビーチーヘッド岬まで延びる白亜の丘陵にある国立公園。中東部南麓の海峡沿岸には、保養都市として有名なブライトンがある。
サウスダウンズの丘陵は 、7500万年から9千万年前の白亜紀に堆積したチョークの厚い帯状の地層から形成されており、アンモナイト、ウニ、軟体動物などの海洋先史時代の動物の化石が多数見られる。
3、ピーク・ディストリクト(Peak District)国立公園
イングランド中部にある国立公園。マンチェスター市とシェフィールド市の中間に位置する。同国最古の国立公園として知られ、ムーア(荒地)と草原が広がり、石灰岩の岩山、鍾乳洞、湖などが点在する。
4、ペンブロークシャー・コースト(Pembrokeshire Coast)国立公園(ウエルズ語;Parc Cenedlaethol Arfordir Penfro)
ウエルズ西部のペンブロックシャー海岸沿いに拡がる英国で唯一自然のままの海の風景だけで構成されている国立公園。
5、ブローズ(Broads)国立公園
イングランド南部のノーフォーク郡とサフォーク郡に跨る湖と水路網で構成されている国立公園。中世来の泥炭採掘跡が見られる。