2015年のクリスマス切手6種は、キリストの受胎告知から生誕まで、聖母マリアとキリスト生誕を祝いに来た東方の三博士の物語のイメージを図案化したもので、明るい空と光を強調、駱駝や羊をキー・プレーヤーとして扱っている。
6種のうち、2種には"LARGE"という横長の切手が別途発行されており、これは横長の封筒に貼るための配慮である。クリマス切手には2013年からのような"LARGE"版が用意されるようになった。下段の4種は外国向け郵便の料金のものである。
クリスマス切手は1966年以降毎年発行されており、最近では2015年版のように聖書から題材をとった宗教色の強い図柄と2014年版のように宗教色のない世俗的なお祝いの画像とを下掲のように毎年交互に配している。
これに対し、わが国の「年賀切手」は1935年に初めて発行され、1950年からは毎年継続して発行されている。ところが、世界全体では英国に追随する国が増えて、現在では160ヵ国・地域でクリスマス切手の毎年発行が定着、キリスト教国が多いことに驚かざるを得ない。韓国もクリスマス切手を発行しているが、イスラム教国や仏教国では発行されることはない。年賀切手を発行しているのは日本と中国くらいである。
英国のクリスマスは日本のお正月と同様に家族が集まる年に一度の大イベントでプレゼントを交換したり、食事を一緒に楽しんだりする。日頃は教会にほとんど行かない若者たちもクリスマスにはミサに参加する。
ロンドン在住中、クリスマスにはよく教会のミサに出掛けた。筆者はクリスチャンではないものの、クリスマスには鉄道やバスなど公共交通機関はすべて運休し、商店なども全部閉まっているので、行くところと言えば教会くらいしかなかった。荘厳なセント・ポールやウエストミンスター寺院といった大聖堂だけではなく、郊外の小さな教会でのクリスマス・ミサにも牧師さんの説教に聞かせるものがあり、その厳かで家庭的な雰囲気は印象的であった。
英国では教会のほとんどがAnglican Communion(英国聖公会)に属しており、わが国では英国国教会と呼ばれている。これはヘンリー8世(在位1509~47年)が王妃キャサリンとの離婚を認めないカトリック教会に反逆してローマの大本山から離脱独立したキリスト教の分派である。ただし、ほぼ同時の16世紀にカトリックから分離したプロテスタントのように教義上の争いによる離反ではなかったので、表面的にはカトリックと変わりがない。
その後、5世紀に亘ってカトリックと英国聖公会は反目を続けてきたが、1980年にエリザベス女王が史上初めてバチカンを公式訪問、82年にはローマ法王ヨハネ・パウロ2世が初訪英して和解が成立している。