チャールズ・ディッケンズ(1812年~1870年)の生誕200年を記念して、彼が著した小説に描かれた主要登場人物の挿絵6枚の記念切手(上掲)と小説の情景が描かれた挿絵4枚のミニチュア・シート(下掲)が発行された。
切手の人物像は、左からオリヴァー・トウゥイスト、ピクウィック・クラブ、骨董屋、マーチン・チャズルウィット、ドンビー父子、デイヴィッド・コッパーフィールドという題名の小説に登場する主人公である。
英国にはわが国のような挿絵付きの新聞や雑誌連載小説はないが、豪華な挿絵が入っている単行本の小説は多い。ディッケンズも多くの画家と知り合い、中でもGeorge CruikshankとHablot Browse('Phizs')という二人の挿絵画家を重用した。
ディケンズはヴィクトリア朝を代表する国民作家として知られ、主に下層階級を主人公とした弱者の視点で社会を風刺した作風が読者を魅了してきた。2003年まで流通していた10ポンド紙幣の肖像画にもなっている。
生誕200年記念の催しでは「これほど長い年月を経ても、ディッケンズは英語で書かれた文学の最高峰の作家であることに変わりはない。彼が生み出した登場人物たちは当時と同様に現代でも精彩を放っている」とのチャールズ皇太子のメッセージが披露されている。
この4枚に描かれている情景は、左からニコラス・ニクルビー、荒涼館、リトル・ドリッド、二都物語である。
シートの下部にあるディッケンズの署名付きの警句"No one who can read, ever looks at a book, even unopened on a shelf, like one who canot."は難しい単語は一つもないが、理解するのは難しい。「本を読むことができる誰も、できない人と同様に、棚の上に未開封の本があっても、その本を手にとろうとしない」と皮肉っているのであろうか。
彼の名言では「誰もがたくさん持っている、今の幸せに目を向けなさい。誰もが少しはもっている、過去の不幸は忘れなさい」「病気や悲しみも人にうつるが、笑いや上機嫌ほど、うつり易いものもこの世にない」がよく知られている。また、「私は、時間厳守、整理整頓、勤勉の習慣なくして、また、一つのことに専念するという決意なくしては、私のしてきたことを決して成し遂げられ得なかった」といった自信満々のものもある。