昨年(2016年)7月28日にビアトリクス・ポター(Beatrix Potter、1866年7月28日~1943年12月22日)の生誕150周年を記念したピーター・ラビットの記念切手シート(上掲)と6枚の単片記念切手(下掲)が発行された。
シートの4枚には『ピーターラビットのおはなし』(The Tale of Peter Rabbit, 1902)に出てくるFropsy、Mopsy、Cotton-tail、Peterの4匹の兎が描かれている。このお話のきっかけは、1893年に作者ビアトリクス・ポターが5歳の少年ノエルに書いた絵手紙であった。英国の田園農園を舞台に物語は進行する。
いたずら好きの兎のピーターがマグレガーさんの庭に入り込みレタスを食べているところを見つかってしまう。ピーターはどうなるのか、ノエルはひやひやしながら手紙を待っていた。
ビアトリクスはこのお話を絵本にしたいと考えたが、なかなか出版に至らず、ようやく1902年に初版が刊行されたところ、2年足らずで5万部を超えるベストセラーとなった。その後、他の動物も加わって、多くのキャラクター兎が登場するピーター・ラビットの絵本シリーズとなり、100年以上を経た今も世界中の人々に愛され続けている。
単片の6枚には左上から右へ順に、6つの物語の主人公となった動物のキャラクターが描かれている。
1、『ピーターラビットのおはなし』(The Tale of Peter Rabbit, 1902)
2、『ティギーおばさんのおはなし』(The Tale of Mrs. Tiggy-Winkle, 1905)
3、『りすのナトキンのおはなし』(The Tale of Squirrel Nutkin, 1903)
4、『あひるのジマイマのおはなし』(The Tale of Jemima Puddle-Duck, 1908)
5、『こねこのトムのおはなし』(The Tale of Tom Kitten, 1907)
6、『ベンジャミンバニーのおはなし』(The Tale of Benjamin Bunny, 1904)
ビアトリクス・ポターはロンドンでヴィクトリア時代の裕福な中産階級に生まれ、幼いころから絵がうまくて多くのスケッチを残している。家でさまざまな動物をペットとして飼育し、キノコにも興味を持って学会に論文を提出している。
39歳で婚約するが、わずか1か月後に婚約相手が死去、その直後に湖水地方に念願の農場を手に入れて、創作活動に乗り出した。持ち前の観察力により動物を生き生きとした描き、文章は簡潔で洗練されている。これはシェクスピアの作品を暗唱したことや欽定聖書を繰り返し読むことで鍛えられていったと言われている。
彼女の創作活動は湖水地方に移ってから47歳で結婚するまでの十数年間にに集中している。この間に矢継ぎ早に出版されたピーター・ラビットの絵本シリーズがいまだに児童文学の古典として世界各国で親しまれているのは驚くべきことである。
結婚後はキャラクターの関連商品販売にも着手した。また、湖水地方特有のハードウィック種の羊の保護や育成にも尽力し、遺言によりナショナル・トラストに寄付された土地は4,000エーカーと広大であった。
湖水地方のウンドメアに1991年に建てられた「ビアトリクス・ポター世界館(Bowness-on-Windermere)」は、人形とジオラマでピーターラビットの世界を解説してくれる人気観光スポットなっている。