5、2009年9月9日に米国の上下両院合同会議において行なわれたオバマ大統領の演説
連邦議会の夏季休会明け早々の9月9日にオバマ大統領は、上下両院合同会議に出席して、医療改革法案の早期成立を求める特別演説を行なった。演説のなかで、オバマ大統領は「今こそ行動を起こすときがきた」と医療改革の実現に不退転の決意でとり組む考えを強調、政権の浮沈をかけて自らの退路を断った形のきわめて挑戦的な内容であった。米国が国民皆保険に転換する経緯を明らかにする歴史的な文書となるかも知れないこの演説全文の邦訳を掲載するので、参考としていただきたい。改革案の詳細説明の部分については、原文を併記した。
大統領が年頭教書以外の案件について、連邦議会で演説を行なうのはきわめて異例であり、オバマ大統領がいかに医療改革に執念を燃やしているかを、議会に対してのみならず、テレビの生中継で全国民に呼び掛けた反響には大きなものがあった。
この議会演説の翌日に行なわれたCBSの世論調査では、演説前の「支持」40%が52%に上昇、「不支持」は47%から42%に減少した。この改革案に対する医師の支持は高く、NPRの全国世論調査によると、医師の63%が公的保険オプションの導入による皆保険化を歓迎している。
一方で、この演説直後の9月12日には、この医療改革に反対する保守派の人々が10万人以上も首都ワシントンに集まり、連邦議会前で大規模な抗議集会が開かれた。16年前のクリントン改革への反対は、医療保険会社のロビー活動やテレビ宣伝など利権擁護の動きが主体であったが、この抗議集会に集まった人々の多くは中産階級の白人であり、公的保険の拡大による「大きな政府」に反発する自由重視の国民心情にも根強いものがあることを印象づける出来事であった。
この連邦議会演説で、オバマ大統領は医療改革の目標は三点に絞られるとして、第一に、医療保険に加入している人々により多くの医療保障と安定性を提供すること、第二に、無保険者に医療保険を提供すること、そして、第三に、医療費の伸びを経済成長に合わせて抑制することにつき、具体策を示している。もちろん、この改革の主眼は、第二の国民皆保険の実現にあるので、米国民すべてに基本的な医療保険に加入することを義務付け、現在無保険の個人と中小企業主のために、新たに安価で良質の「公的保険オプション」を設けるとしている。
この演説では、この「公的保険オプション」の公的医療保険者をメディケアのような政府機関とするのか、半官半民の組合組織とするのかは、明らかにされていない。その後、9月22日に上院財政委員会に提出され、10月13日に共和党のスノウ議員も賛成に廻って可決されたボーカス委員長案では「公的保険ではなく、非営利の協同組合を設立して、民間保険会社と競合させる」としているが、最終の着地点は見えていない。
また、大統領演説では、「低価格の保険料でさえも支払う余裕がない個人や中小企業主のためには、必要に応じた規模の『税額控除』制度を設ける」としているが、ボーカス委員長案ではさらに踏み込んで、「年収$22,000の四人世帯では、保険料を収入の2%とし、収入増に伴い順次引上げて年収$88,000では収入の12%とする、ただし、それでも保険に入らない場合には$1,900の罰金を課す」としている。
この改革に要する追加の費用は向こう10年間で約9,000億ドルとし、その大部分は無駄と経費濫用に満ちている現行の医療システム内で抑制できる費用を見つけることによって賄うことができるとしている。この医療改革のために、たとえ10セントであっても、財政赤字を増やすことはないと強調している。
米国の社会は、最近数年間で人口構成も政治観も変わり、金融危機やGMの救済などを経験して、「大きな政府」や平等重視への社会的な寛容度が高まってきている。現実問題としても、中流層の長期的な失業が増えていることもあって、社会的なセーフティーネットの必要性は、貧困層だけではなく、広範な中間層にも不可欠との見方が強まってきている。このような社会構造の変化も、医療改革に追い風となっている。
上述のボーカス委員長案は、オバマ大統領の演説内容と酷似しており、大統領はこの案を軸に調整を進め、法案の年内成立を目指している。現状では上下両院での議論の行く方は予測し難いが、連邦議会に改革案作りを委ねたオバマ政権の医療改革は、戦略的にも優れており、成功するものと考えられる。
<2009年9月9日に米国の上下両院合同会議において行なわれたオバマ大統領の演説全訳>
下院議長、バイデン副大統領、国会議員の皆さん、そして国民の皆さん
昨年の冬に私がここでスピーチをしたとき、この国は大恐慌以来最悪の経済危機に直面していました。毎月平均70万もの職が失われ、クレジットは凍結され、金融システムは崩壊寸前でした。
いまだに職を探している人や、どうすれば請求書を支払えるか途方にくれている人がみな口を揃えて言っているように、この国はまだ危機から脱していません。力強い全面回復はまだ何ヶ月も先のことです。でも私は、職を求めている人たち全員が仕事を見つけられるようになるまで、資本と信用を求めている企業が活況を呈するようになるまで、自宅を持っている人たちが自分の家を手放さずにすむようになるまで、絶対に歩みを緩めるつもりはありません。それが私たちの最大の目的です。でも、今年1月から実施し始めた大胆かつ断固たる行動のおかげで、私はいま自信を持ってここに立つことができ、そして、この国の経済を破滅の瀬戸際から救い出すことに成功したと断言できます。
私は、ここ数ヶ月間の皆さんの努力と支援に感謝の言葉を述べたいと思います。とくに、私たちに回復への道を開く難しい法案の採決をしてくれた人たちに感謝します。また、国家の試練の時に、国民の皆さんが見せてくれた忍耐と不屈の意志にも感謝したいと思います。
でも、私たちは危機の後片付けをするためだけにここまでやってきたのではありません。未来を作るためにやってきたのです。ですから今夜は、その未来にとっての中心的な問題について、皆さんにお話をしたいと思います。それは、医療改革の問題です。
この問題を取り上げた大統領は私が初めてではありませんが、ぜひとも私で最後にしたいという決意を固めています。セオドア・ルーズベルト大統領が初めて医療保険制度改革を提唱してから、1世紀近くが経とうとしています。それ以来ずっと、民主党であれ共和党であれ、ほとんどすべての大統領と議会が、何とかしてこの課題に対処しようと取り組んできました。1943年に、ジョン・ディンゲルが初めて包括的な医療制度改革法案を提出しました。その65年後の今になっても、ジョン・ディンゲルの息子さんが、議会が始まるたびに同じ法案を提出し続けています。
毎年毎年、何十年たってもこの課題に対処できずにいたことにより、私たちはもはや極限まで来てしまっています。無保険者たちに降りかかる悲惨な窮状は、誰もが理解できることです。この人たちは、ほんの1回事故に逢うだけ、あるいは病気をしただけで、あっという間に破産してしまうという状況の中で日々暮らしています。しかも、これは生活保護を受けている人々の話ではないのです。中産階級の普通の人たちなのです。職場で医療保険に入れない人もいれば、自営なので保険に入る余裕がないという人もいます。個人で医療保険に入ろうとすると、会社で保険に入る場合と比べて3倍もの保険料がかかるからです。また、支払う意思もあるし、その能力もあるのに、既往症があってリスクが高すぎるとか、再発したら補償額が高額になりすぎるという理由で保険加入を拒否された人も大勢います。
地球上にある民主主義の先進国の中で、裕福な国家の中で、何百万人もの国民にそのような苦難を強いているのはこの国だけです。今現在、医療保険に入りたくても入れないアメリカ市民は3千万人います。アメリカ人の3人に1人はたった2年の間に無保険の状態になります。そして毎日、1万4千人もの人たちが医療保険を失っているという現状があります。言い換えると、これは誰にでも起こり得ることなのです。
しかし、この国の医療保険制度をむしばむ問題は、無保険者の問題だけではありません。保険に入っている人たちにとってすら、今ほど安心と安定が脅かされている時代はありません。引越ししたら、職を失ったら、あるいは仕事を変えたら、医療保険もなくなってしまうのではないかと心配する人が日増しに増えているのが現状です。保険料を払っていても、病気になったとたんに保険会社に補償を外されたとか、治療にかかった費用を全額支払ってくれなかったといったような経験をする人が増えています。そのようなことが毎日起きているのです。
イリノイ州に住んでいたある男性は、自分に胆石があることを彼自身知らなかったのですが、そのことを保険会社に申告していなかったという理由で、ガンの化学療法を受けている途中で医療保険を失ってしまいました。そのため、治療は延期され、男性はそれが原因で死んでしまいました。テキサス州のある女性は、両側の乳房切除術を受けることになっていたのですが、ニキビの症状を申告するのを忘れていたという理由で保険が解約されてしまいました。再契約を結んだ頃には、その女性の乳がんは倍以上の大きさになっていたのです。これは非常に残念なことです。間違っています。このアメリカ合衆国では、誰であってもそのような扱いを受けるべきではありません。
さらに、増大する医療費の問題があります。この国では、他のどの国と比べても1人当たり1.5倍の費用を医療に使っていますが、だからといってその分健康になっているわけではありません。これが、医療保険料が賃金の3倍の速さで増えている理由の一つです。従業員に支払わせる保険料を増やさざるを得ない雇用主や、保険の提供を完全に廃止する雇用主、とくに中小企業が増えているのはそのためです。意欲があっても、多くの起業家がそもそも事業を起こせないのもそのためであり、自動車メーカーなど国際競争を繰り広げるアメリカ企業が圧倒的に不利な立場に立たされているのもそのためなのです。そして、保険に入っている人たちは、無保険者のために、増え続ける税金を知らずに支払わされているということになるのです。救急外来を受診するどこかの誰か、無料の慈善医療を受けるどこかの誰かのために、国民一人当り年間約1,000ドルが使われています。
結局のところ、アメリカの医療システムは、持続不可能な負担を納税者に課しているのです。これまでのような速さで医療費が増加すると、メディケアやメディケイドといったような制度が大きく圧迫されることになります。高騰する医療費を抑制する対策を取らないでいると、最終的には、政府のすべてのプログラムを合わせたより多くの金額を、メディケアとメディケイドに使うことになります。つまり、一言で言うと、この国の医療問題は財政赤字の問題だということになります。それ以外の何物でもありません。
これが事実です。議論の余地はありません。制度を改革する必要があると誰もが思っています。問題は、改革をどう進めるのか、その方法です。
一方には、カナダのような「単一支払システム」を導入する以外、この問題を解決する方法はないと主張する人々がいます。その場合には、民間保険市場を大幅に制限し、政府がすべての国民に医療保険を提供することになります。他方、企業医療保険の制度は廃止し、医療保険に入るかどうかはもっぱら個人に任せるべきだと主張する人々がいます。
両方とも議論する価値のある方策ですが、どちらにしても徹底的な大変革であり、多くの人にとって、現在の医療現場に混乱を来たすものです。医療はこの国の経済の6分の1に相当するため、一からまったく新しい制度を構築しようとするより、うまく機能している部分をベースにして、うまくいっていない部分を直しながら制度を作っていくほうが理にかなっているものと確信しています。それこそが、ここ数ヶ月間にわたって皆さんが成し遂げようとして議論してこられた改革案なのです。
その間に、私たちは最高に素晴らしいワシントンと、最悪のワシントンの両方を目の当たりにしました。
皆さんの多くが、どうすれば改革を成し遂げることができるかについて思慮に富んだアイディアを出すために、一年間の大半にわたって根気強く働いてこられた姿を目の当たりにしました。法案作りを担当した5つの委員会のうち、4つが作業を完了し、本日、上院財政委員会は、来週には次の段階へ進むつもりであると発表しています。そのようなことは、今までになかったことです。私たちの努力は、医師、看護師、病院、高齢者団体、さらには製薬会社までもが参加した先例のない協力関係によって支えられてきました。その多くが、かつて制度改革に反対していた人たちです。さらに、この議会では実施する必要のある事柄の約80%に関して合意がなされており、かつてないほど改革のゴールに近づいてきています。
しかし、一方で、私たちはここ数ヶ月間に、多くの国民が政府に対して持っている軽蔑心をさらに強めるだけの、相変わらずの見世物的な党派争いも目の当たりにしました。真摯な議論ではなく、脅し戦術もありました。歩み寄りの望みすらない頑固なイデオロギー的空論を振りかざす人もいました。国家としてやっと長年の難題を解決する機会が出てきたことなどそっちのけにして、多くの人がこれを政治上の短期的なポイント稼ぎに利用しようとしました。そして、攻撃と反撃の嵐が渦巻く中から混乱が生まれ、それが全体を支配したのでした。
でも、もう言い争いの時間は終わりです。ゲームの時間は終わりました。これからは行動のときです。両党で最善の考えを持ち寄らなければならないときです。私たちには、私たちをここへ送り込んでくれた国民のためになすべきことを実行する力があるのだと、国民に証明しなければなりません。今や、医療改革を成し遂げるときが来たのです。
私が今日発表する改革案は、3つの基本的な目的を達成することを目ざすものです。
医療保険に入っている人に、さらなる医療保障と安定性を提供します。無保険者には、医療保険を提供します。そして、家族、企業、政府のために、医療費の増大を抑制します。これは、この難題を解決するために、政府や保険会社だけでなく企業や個人にいたるまで、すべての人に責任の一端を担っていただくようお願いする改革案です。そしてこれは、上院議員と下院議員、民主党と共和党、さらには予備選挙と大統領選挙の両方で私の競争相手だった人たちにいたるまで、あらゆる人々の考えを組み込んで具現化しようという改革案です。
The plan I'm announcing tonight would meet three basic goals:
It will provide more security and stability to those who have health insurance. It will provide insurance to those who don't. And it will slow the growth of health care costs for our families, our businesses, and our government. It's a plan that asks everyone to take responsibility for meeting this challenge - not just government and insurance companies, but employers and individuals.
And it's a plan that incorporates ideas from Senators and Congressmen; from Democrats and Republicans - and yes, from some of my opponents in both the primary and general election.
では、この改革案について、すべての国民にご理解いただきたい内容をご説明したいと思います。
第一に、多くの国民が、すでに職域での医療保険、メディケア、メディケイド、あるいは退役軍人保険に加入していますが、その場合には、今現在受けている保険の補償範囲や医療内容を変えるよう要求されることは一切ありません。繰り返し申し上げます。この改革案は、今現在受けている便益を変えるよう皆さんに要求するものではありません。
Here are the details that every American needs to know about this plan:
First, if you are among the hundreds of millions of Americans who already have health insurance through your job, Medicare, Medicaid, or the VA, nothing in this plan will require you or your employer to change the coverage or the doctor you have. Let me repeat this: nothing in our plan requires you to change what you have.
これは、皆さんが加入している医療保険を、さらに有効に機能させようという改革案です。この改革案では、既往歴を理由に医療保険会社が補償を拒否することは違法となります。私がこの法案に署名すればただちに、病気になったときに保険会社が補償を外したり、いちばん必要なときに補償額を減額させたりすることは違法となります。1年間あるいは一生涯に受けることのできる補償額に、保険会社が勝手に制限を加えることはできなくなります。また、皆さんが支払う自己負担額に上限を設けます。この国に住む誰かが病気になっただけで破産してしまったというようなことは断じてあってはならないことだからです。そして、保険会社には、乳がんマンモグラフィーや大腸内視鏡検査といったような定期健診と予防医療を、追加料金なしでカバーするよう義務付けます。乳癌や大腸癌は、悪化する前に早期発見するのが最善だからです。それは理にかなっていることであり、医療費の節減になり、ひいては人の命を救うことになります。
これが、すでに医療保険に入っている国民の皆さんがこの改革案から期待できることです。つまり、よりいっそうの医療保障と安定性をめざします。
What this plan will do is to make the insurance you have work better for you. Under this plan, it will be against the law for insurance companies to deny you coverage because of a pre-existing condition. As soon as I sign this bill, it will be against the law for insurance companies to drop your coverage when you get sick or water it down when you need it most. They will no longer be able to place some arbitrary cap on the amount of coverage you can receive in a given year or a lifetime. We will place a limit on how much you can be charged for out-of-pocket expenses, because in the United States of America, no one should go broke because they get sick. And insurance companies will be required to cover, with no extra charge, routine checkups and preventive care, like mammograms and colonoscopies - because there's no reason we shouldn't be catching diseases like breast cancer and colon cancer before they get worse. That makes sense, it saves money, and it saves lives.
That's what Americans who have health insurance can expect from this plan - more security and stability.
では次に、今現在何千万人もの国民が医療保険に加入していないという現状がありますが、この改革案の第二部では、無理なく支払える範囲の質の高い医療保険の選択肢を皆さんに提供します。失業したり、職を変えたりした場合でも、医療補償が受けられます。独立して小さなビジネスを始める場合でも、補償が受けられます。これは、個人や中小企業が競争力のある価格で医療保険を選ぶことのできる新しい保険市場を創設することによって実行します。この市場には何百万人もの新規の顧客が見込めるので、保険会社にとっても大きなインセンティブとなります。これらの新規顧客は1つの大きなグループとして大きな力を持ち、保険料や補償範囲について医療保険会社と交渉できるようになります。大企業や政府で働く公務員は、そのようにして手頃な価格での医療保険に入っているのです。この議会で働いている誰もが、そのようにして手頃な価格の医療保険に入っているのです。私たちが享受しているものと同じものを、すべての国民にも与えるときが来たのです。
Now, if you're one of the tens of millions of Americans who don't currently have health insurance, the second part of this plan will finally offer you quality, affordable choices. If you lose your job or change your job, you will be able to get coverage. If you strike out on your own and start a small business, you will be able to get coverage. We will do this by creating a new insurance exchange - a marketplace where individuals and small businesses will be able to shop for health insurance at competitive prices. Insurance companies will have an incentive to participate in this exchange because it lets them compete for millions of new customers. As one big group, these customers will have greater leverage to bargain with the insurance companies for better prices and quality coverage. This is how large companies and government employees get affordable insurance. It's how everyone in this Congress gets affordable insurance. And it's time to give every American the same opportunity that we've given ourselves.
医療保険市場で提供される低価格の医療保険の保険料ですら支払う余裕がないという個人や中小企業には、必要に応じた範囲の税額控除を提供します。そして、この新しい市場に参入したいという保険会社は、私が先ほど申し上げた消費者保護を厳守しなければなりません。この市場は4年後に開設の予定で、4年あれば完璧な仕組みを作る時間は十分にあります。それまでの間は、既往症があるために保険に入れない人たちを対象に、重病になっても破産しないですむ低価格の医療保険をただちに提供します。これは、大統領選挙のときにジョン・マケイン上院議員が提唱したアイディアですが、今でも良いアイディアですし、私たちはこれを採り入れることにしました。
For those individuals and small businesses who still cannot afford the lower-priced insurance available in the exchange, we will provide tax credits, the size of which will be based on your need. And all insurance companies that want access to this new marketplace will have to abide by the consumer protections I already mentioned.
This exchange will take effect in four years, which will give us time to do it right. In the meantime, for those Americans who can't get insurance today because they have pre-existing medical conditions, we will immediately offer low-cost coverage that will protect you against financial ruin if you become seriously ill. This was a good idea when Senator John McCain proposed it in the campaign, it's a good idea now, and we should embrace it.
さて、私たちがこのような手頃なオプションを提供したとしても、無保険のままで生活するという危険をあえて冒す人たち、とりわけ若くて健康な人たちはなくならないと思われます。また、従業員に正当な医療保険を提供しない会社はなくならないと思われます。しかし、問題はそのような無責任な行為により、他の人たちが金銭的な損害をこうむるという点です。手頃な選択肢があるのに、それでも保険に入らないという人々が、病気や事故で救急治療室での治療を受けた場合、その高い治療費は私たちが支払うことになるのです。従業員に保険を提供しない企業があると、従業員が病気になったときに、私たちがその勘定を支払うことになり、さらには、競争相手の企業と比べて不当に有利な立場をその企業に与えてしまうことになるのです。すべての人がそれぞれの役割を果たさない限り、私たちが目ざしている医療保険制度改革の多く、とくに既往症があっても医療保険を提供するように保険会社に義務付けるという制度改革は達成できません。
Now, even if we provide these affordable options, there may be those - particularly the young and healthy- who still want to take the risk and go without coverage. There may still be companies that refuse to do right by their workers. The problem is, such irresponsible behavior costs all the rest of us money. If there are affordable options and people still don't sign up for health insurance, it means we pay for those people's expensive emergency room visits. If some businesses don't provide workers health care, it forces the rest of us to pick up the tab when their workers get sick, and gives those businesses an unfair advantage over their competitors. And unless everybody does their part, many of the insurance reforms we seek - especially requiring insurance companies to cover pre-existing conditions - just can't be achieved.
ですから、この改革案では、大半の州で自動車保険に入ることが義務付けられているように、誰もが基本的な医療保険に加入することを個人に義務付けます。同様に、企業に対しては、従業員に保険を提供するか、従業員にかかる医療費をカバーするための資金を拠出することを義務付けます。それでも保険に入る余裕がない個人には救済措置を設け、中小企業の95%は、その規模が小さく利益幅も小さいことに配慮して、これらの義務から免除されます。しかし、支払う余裕が十分あるにもかかわらず、大企業が従業員に対する責任を果たさず、個人が自分自身の責任を回避することによって、制度をないがしろにするというようなことは容認できません。すべての人がそれぞれの役割を果たさない限り、この医療保険制度改革は実現しないのです。
That's why under my plan, individuals will be required to carry basic health insurance- just as most states require you to carry auto insurance. Likewise, businesses will be required to either offer their workers health care, or chip in to help cover the cost of their workers. There will be a hardship waiver for those individuals who still cannot afford coverage, and 95% of all small businesses, because of their size and narrow profit margin, would be exempt from these requirements. But we cannot have large businesses and individuals who can afford coverage game the system by avoiding responsibility to themselves or their employees. Improving our health care system only works ,if everybody does their part.
解決する必要のある重要なポイントはまだいくつか残っていますが、保険加入者を対象とした消費者保護、個人と中小企業を対象に手頃な価格で医療保険を購入できるようにする医療保険市場、保険料を支払うことのできる人には保険加入を義務付けるなど、私がここで説明した改革案の全体像については、幅広いコンセンサスが得られているものと確信しています。
While there remain some significant details to be ironed out, I believe a broad consensus exists for the aspects of the plan I just outlined: consumer protections for those with insurance, an exchange that allows individuals and small businesses to purchase affordable coverage, and a requirement that people who can afford insurance get insurance.
この改革は間違いなく、あらゆる階層の国民のみならず、経済全般に大きな利益をもたらすものです。でも、ここ数ヶ月に広まった様々な誤報を考えると、多くの人々が改革の先行きを不安な思いで見ていることも理解できます。ですから今日は、まだ解決されていない重要な論点のいくつかについて述べたいと思います。
And I have no doubt that these reforms would greatly benefit Americans from all walks of life, as well as the economy as a whole. Still, given all the misinformation that's been spread over the past few months, I realize that many Americans have grown nervous about reform. So tonight I'd like to address some of the key controversies that are still out there.
人々が懸念していることの一部は、いかなる犠牲を払ってでも改革を抹殺することだけを基本方針としている人たちが広めた偽りの主張から派生したものです。その最も良い例が、私たちが高齢者への医療を制限する権力を持った官僚委員会を組織するつもりだという主張で、ラジオやテレビのトークショーの司会者だけでなく、有名な政治家ですら、そのようなことを言っていました。このような議論は、ひどく冷笑的で無責任でなければ、一笑に付す程度のばかばかしい内容です。彼らの主張は真っ赤な嘘にすぎません。
Some of people's concerns have grown out of bogus claims spread by those whose only agenda is to kill reform at any cost. The best example is the claim, made not just by radio and cable talk show hosts, but prominent politicians, that we plan to set up panels of bureaucrats with the power to kill off senior citizens. Such a charge would be laughable if it weren't so cynical and irresponsible. It is a lie, plain and simple.
一方で、改革への取り組みは、不法入国者も医療保険で保護しようとするものだと主張している人もいます。これも間違っています。私が提案している改革は、この国に不法滞在している人たちには適用されません。もう一つ明確にしたい誤解がありますが、私たちの改革案では、連邦政府の資金が妊娠中絶に使われることはありません。医師などが反道徳的な行為を拒否できる連邦良心法はそのまま存続します。
There are also those who claim that our reform effort will insure illegal immigrants. This, too, is false- the reforms I'm proposing would not apply to those who are here illegally.
And one more misunderstanding I want to clear up - under our plan, no federal dollars will be used to fund abortions, and federal conscience laws will remain in place.
また、私の改革案は、医療制度全体を「政府が乗っ取るものだ」として、改革に反対する一部の人たちから攻撃されています。その証拠として、無保険者や中小企業を対象に、メディケイドやメディケアのように公的資金が投入され政府によって運営される保険オプションを選択できるようにする条項がこの改革案には盛り込まれているという点が指摘されています。
My health care proposal has also been attacked by some who oppose reform as a "government takeover" of the entire health care system. As proof, critics point to a provision in our plan that allows the uninsured and small businesses to choose a publicly-sponsored insurance option, administered by the government just like Medicaid or Medicare.
そこで、事実を明確にして、この誤解を解きたいと思います。私の基本理念は、選択と競争があるほうが消費者はよりよいサービスを受けられるということであり、この理念は以前から変わりません。残念なことに、34の州で医療保険市場の75%が5社に満たない少数の保険会社によって寡占されています。アラバマ州に至っては、90%近くが1社によって独占されています。競争がなければ、保険料は上がり、サービスの質は下がります。保険会社は、いちばん健康な人だけをつまみ食いして重病人は切り捨てようとし、負担能力がない中小企業に不当に高い値段を請求し、そして保険料をつり上げるなど、勝手気ままに顧客をぞんざいに扱うようになります。
So let me set the record straight. My guiding principle is, and always has been, that consumers do better when there is choice and competition. Unfortunately, in 34 states, 75% of the insurance market is controlled by five or fewer companies. In Alabama, almost 90% is controlled by just one company. Without competition, the price of insurance goes up and the quality goes down. And it makes it easier for insurance companies to treat their customers badly - by cherry-picking the healthiest individuals and trying to drop the sickest; by overcharging small businesses who have no leverage; and by jacking up rates.
保険会社がこのようなことをするのは、彼らが悪人だからではありません。そうすれば儲かるからです。ある保険会社の元役員が議会で証言したように、保険会社では重病人を切り捨てる理由を見つけることが奨励されるだけでなく、報奨金すら出されているのです。すべては、この元役員が「ウォール・ストリートの容赦のない利潤追求期待」と表現したものに応えるための業務なのです。
Insurance executives don't do this because they are bad people. They do it because it's profitable. As one former insurance executive testified before Congress, insurance companies are not only encouraged to find reasons to drop the seriously ill; they are rewarded for it. All of this is in service of meeting what this former executive called "Wall Street's relentless profit expectations."
私は別に医療保険会社を市場から追い出したいと思っているわけではありません。保険会社は法律に則った正当な業務を行い、私たちの知り合いや隣近所の人の中にも、保険会社で働いている人は大勢います。私はただ、彼らに説明責任を果たして貰いたいだけなのです。私が述べた保険制度の改革は、まさにそれです。しかも、さらに一歩踏み込んで保険会社の誠実性を保持するために、医療保険市場で非営利の公的オプションを選べるようにします。ここで明確にしておきたいのは、これは無保険者のためのオプションに過ぎないという点です。誰もそれを選ぶように強制されるようなことはなく、すでに保険に入っている人にはまったく影響を与えないものです。実際のところ、連邦議会予算局の見積もりによれば、これを選ぶのは国民の5%以下であろうと思われます。
Now, I have no interest in putting insurance companies out of business. They provide a legitimate service, and employ a lot of our friends and neighbors. I just want to hold them accountable. The insurance reforms that I've already mentioned would do just that. But an additional step we can take to keep insurance companies honest is by making a not-for-profit public option available in the insurance exchange. Let me be clear - it would only be an option for those who don't have insurance. No one would be forced to choose it, and it would not impact those of you who already have insurance. In fact, based on Congressional Budget Office estimates, we believe that less than 5% of Americans would sign up.
それにもかかわらず、医療保険会社とその関連企業はこの公的保険オプションの考えに反対しています。民間企業は政府と公平に競争できないと彼らは主張するのです。納税者がこの公的保険オプションを助成するのであれば、彼らの主張は正しいかもしれません。でも、そうではありません。私はこれまで、一般の民間保険会社と同様に公的保険オプションも自給自足できるものでなければならず、集める保険料に依存したものでなければならないと主張してきました。でも、公的保険オプションは、利益や膨大な管理コスト、経営陣のサラリーなどで食われてしまう諸経費をなくすことで、消費者により良い条件のサービスを提供することができます。また、このオプションは、民間の保険会社に対し、保険プランを楽に支払える額の範囲にとどめ、顧客を公正に扱うようプレッシャーをかけ続けるという役割も果たします。これは、私立大学が持つ活気あるシステムをいかなる形であれ阻害することなく、公立大学が学生にとってもう一つの選択肢になるのと同じです。
Despite all this, the insurance companies and their allies don't like this idea. They argue that these private companies can't fairly compete with the government. And they'd be right if taxpayers were subsidizing this public insurance option. But they won't be. I have insisted that like any private insurance company, the public insurance option would have to be self-sufficient and rely on the premiums it collects. But by avoiding some of the overhead that gets eaten up at private companies by profits, excessive administrative costs and executive salaries, it could provide a good deal for consumers. It would also keep pressure on private insurers to keep their policies affordable and treat their customers better, the same way public colleges and universities provide additional choice and competition to students without in any way inhibiting a vibrant system of private colleges and universities.
大多数の国民が、私が今日提案した類の公的保険オプションをいまなお支持しているというのは注目に値することです。しかし、右翼であれ、左翼であれ、メディアであれ、その影響を誇張すべきではありません。これは私の改革案の一部に過ぎず、ワシントンのお決まりのイデオロギー闘争に対する便利な口実として利用されるべきものではないのです。進歩的な皆さんにぜひ思い出していただきたいのは、何十年もの間にわたってこの改革の原動力となっているのは、医療保険会社の不正乱用を廃絶し、保険がない人にも入れるものにするという理念であるという点です。公的保険オプションはそのための手段の一つに過ぎないし、最終的な目的を達成するのに役立つ考えなら、どんな意見にも積極的に耳を傾ける姿勢を保っていなければなりません。そして、共和党の皆さんに申し上げたい。政府が医療を乗っ取るというような度を越した主張をするのではなく、皆さんが抱いているに違いない当然の懸念に対し、私たちは一致協力して取り組んでいくべきです。
It's worth noting that a strong majority of Americans still favor a public insurance option of the sort I've proposed tonight. But its impact shouldn't be exaggerated - by the left, the right, or the media. It is only one part of my plan, and should not be used as a handy excuse for the usual Washington ideological battles. To my progressive friends, I would remind you that for decades, the driving idea behind reform has been to end insurance company abuses and make coverage affordable for those without it. The public option is only a means to that end - and we should remain open to other ideas that accomplish our ultimate goal. And to my Republican friends, I say that rather than making wild claims about a government takeover of health care, we should work together to address any legitimate concerns you may have.
たとえば、公的保険オプションについては、保険会社が手頃な保険プランを提供していない市場だけで実施したほうがよいのではないかと提案してくれた人がいます。一方で、生協やそのほかの非営利団体に運営させるのはどうかと提案してくれた人もいます。すべて、検討する価値のある建設的な考えだと思います。でも、私が断じて翻さないのは、手頃な価格で加入できる医療保険がないのであれば、われわれ政府が選択肢を提供するという基本原則です。そして、政府の官僚や保険会社の融通のきかない職員が、皆さんと皆さんが必要としている医療の間に割って入るようなことはないと断言します。
For example, some have suggested that that the public option go into effect only in those markets where insurance companies are not providing affordable policies. Others propose a co-op or another non-profit entity to administer the plan. These are all constructive ideas worth exploring. But I will not back down on the basic principle that if Americans can't find affordable coverage, we will provide you with a choice. And I will make sure that no government bureaucrat or insurance company bureaucrat gets between you and the care that you need.
最後に、私にとっても、ここにいる皆さんにとっても、さらには一般市民にとっても、大きな懸念となっている問題について論じたいと思います。それは、この改革案に必要な財源をどう確保すればよいかについてです。
Finally, let me discuss an issue that is a great concern to me, to members of this chamber, and to the public - and that is how we pay for this plan.
いくつかの点について説明します。第一に、現在も将来にわたっても、私は10セントたりと財政赤字を増やすような改革案には断じて署名しません。その証明として、約束した節減が実現しなかった場合には、さらなる支出削減を実施することを義務付けるという条項をこの改革案に盛り込みます。私はホワイトハウスにやってきて、1兆ドルもの財政赤字に直面したわけですが、その理由の一つは、イラク戦争から富裕層を対象とした減税措置まで、この10年間にわたって財源がきちんと確保されていなかった政策があまりに多すぎたためです。私は、医療改革で同じ過ちを犯しません。
Here's what you need to know. First, I will not sign a plan that adds one dime to our deficits - either now or in the future. Period. And to prove that I'm serious, there will be a provision in this plan that requires us to come forward with more spending cuts if the savings we promised don't materialize. Part of the reason I faced a trillion dollar deficit when I walked in the door of the White House is because too many initiatives over the last decade were not paid for - from the Iraq War to tax breaks for the wealthy. I will not make that same mistake with health care.
第二に、この改革案の大半の施策が、現在の医療システム内に見受けられる様々な無駄と濫用を省くことで、その財源を確保できるものと見積もっています。現在、私たちは苦労して手に入れた貯蓄や血税を医療に使っているわけですが、その多くが無駄に使われ、私たちは大して健康になっていません。これは私の意見ではなく、全国の医療従事者の意見です。また、メディケアとメディケイドの無駄に関してもその通りだと言えます。
Second, we've estimated that most of this plan can be paid for by finding savings within the existing health care system - a system that is currently full of waste and abuse. Right now, too much of the hard-earned savings and tax dollars we spend on health care doesn't make us healthier.That's not my judgment - it's the judgment of medical professionals across this country. And this is also true when it comes to Medicare and Medicaid.
実際のところ、今回の論争でメディケアも扇動と歪曲の対象となったという事実がありますので、少しの間、この点について高齢者の皆さんにお話をしておきたいと思います。
In fact, I want to speak directly to America's seniors for a moment, because Medicare is another issue that's been subjected to demagoguery and distortion during the course of this debate.
40年以上前になりますが、一生懸命に働いて過ごしてきた高齢者が、晩年を医療費にあえいで過ごさなくてもすむようにしようという理念を目ざしてこの国は立ち上がり、そしてメディケアが生まれました。以来ずっと、これは世代から世代へと受け継がれなければならない尊ぶべき信託となっています。ですから、メディケア信託ファンドのお金は、1ドルたりともこの改革案のための支出には使いません。
More than four decades ago, this nation stood up for the principle that after a lifetime of hard work, our seniors should not be left to struggle with a pile of medical bills in their later years. That is how Medicare was born. And it remains a sacred trust that must be passed down from one generation to the next. That is why not a dollar of the Medicare trust fund will be used to pay for this plan.
この改革案で排除されるのは、何千億ドルもの無駄や不正行為と、保険会社の懐へ入るメディケアへの根拠のない不当な助成金、つまり、保険会社の利益を水増しするだけで、一般の人々の医療の向上には何ら寄与しない助成金だけです。私たちはまた、数年以内に今後の医療費の無駄遣いを摘発することを使命とする医師と医療専門家による独立委員会を創設します
The only thing this plan would eliminate is the hundreds of billions of dollars in waste and fraud, as well as unwarranted subsidies in Medicare that go to insurance companies - subsidies that do everything to pad their profits and nothing to improve your care. And we will also create an independent commission of doctors and medical experts charged with identifying more waste in the years ahead
これはすべて、高齢者の皆さんに約束した給付を、確実に皆さんへ届けるための対策です。将来の世代のために、メディケアを確実に存続させるための対策です。そして、無駄や不正行為を省くことで節約した財源の一部が、処方薬を買うために年に数千ドルもの自己負担を多数の高齢者に強いている「保険のギャップ」を埋めるために使えるようになります。この改革案では、それを皆さんに約束します。ですから、どんなふうに給付がカットされることになるかについての恐ろしげな話に耳を貸してはいけません。とくに、そういう出まかせを広めている人の中には、かつてメディケアに反対し、今年に入ってからは、メディケアを基本的に民営の商品券バウチャー配布のプログラムに変えてしまいかねない予算を支持した人もいます。そんなことは、私が目を光らせている限り絶対にあり得ません。私はメディケアを守ります。
These steps will ensure that you - America's seniors - get the benefits you've been promised. They will ensure that Medicare is there for future generations. And we can use some of the savings to fill the gap in coverage that forces too many seniors to pay thousands of dollars a year out of their own pocket for prescription drugs. That's what this plan will do for you. So don't pay attention to those scary stories about how your benefits will be cut - especially since some of the same folks who are spreading these tall tales have fought against Medicare in the past, and just this year supported a budget that would have essentially turned Medicare into a privatized voucher program. That will never happen on my watch. I will protect Medicare.
メディケアは医療システムの中で大きな部分を占めているわけですから、このプログラムをよりいっそう効率的なものにすることは、医療を提供している今のやり方を、すべての人のための医療費削減につながるような形に変えていくのに役立ちます。ご存知かと思いますが、ユタ州のインターマウンテン・ヘルスケアやペンシルバニア州のガイシンガー・ヘルス・システムなどの医療施設では、以前から平均以下の医療費で質の高い医療サービスを提供しています。独立委員会は、院内感染率を減らすことから医師チーム間の良好な協調関係を奨励することまで、良識に基づくベスト・プラクティスを医師や医療専門家が制度全体にわたって積極的に取り入れるよう働きかける役割も果たします。
Now, because Medicare is such a big part of the health care system, making the program more efficient can help usher in changes in the way we deliver health care that can reduce costs for everybody. We have long known that some places, like the Intermountain Healthcare in Utah or the Geisinger Health System in rural Pennsylvania, offer high-quality care at costs below average. The commission can help encourage the adoption of these common-sense best practices by doctors and medical professionals throughout the system - everything from reducing hospital infection rates to encouraging better coordination between teams of doctors.
メディケアとメディケイドの無駄と非効率を削減することで、この改革案の大半の財源は確保できます。残りの部分は、新たに獲得することになる数千万人の顧客から利益を得ることになると期待される製薬会社と保険会社からの収入が財源になります。この改革では、医療保険会社の最も高価な保険プランに対して課金します。そうすることで、支払われる金額に対し、より大きな価値を提供するよう保険会社に奨励します。これは、民主党と共和党双方の専門家の支持を得ている考えです。これらの専門家によると、このようなちょっとした変化でも、長い目で見れば、国民全体の医療費を抑制するのに役立ちます。
Reducing the waste and inefficiency in Medicare and Medicaid will pay for most of this plan. Much of the rest would be paid for with revenues from the very same drug and insurance companies that stand to benefit from tens of millions of new customers. This reform will charge insurance companies a fee for their most expensive policies, which will encourage them to provide greater value for the money - an idea which has the support of Democratic and Republican experts. And according to these same experts, this modest change could help hold down the cost of health care for all of us in the long-run.
最後に、ここにいる多くの人々、とくに通路の共和党側に座っている人は、この国の医療過誤法を改正することが医療費削減につながると以前から主張してきました。私は、医療過誤法の改正が特効薬になるとは思いませんが、大勢の医師から話を聞いた結果、訴訟リスク回避のための防衛的医療(萎縮医療)が不必要な医療費を増やしている可能性があるということを知りました。そこで、患者の安全を最優先にしながら、医師が医療活動に集中できるようにするにはどうすればよいかについて、様々な考えを一歩進めるよう提案をしているところです。ブッシュ政権は、こういった問題を検証する実証プロジェクトを各州が個別に実施することを認可する方向で検討を進めていました。これは良い考えなので、私は保健福祉長官に今日からこの政策を推し進めるよう指示しています。
Finally, many in this chamber - particularly on the Republican side of the aisle - have long insisted that reforming our medical malpractice laws can help bring down the cost of health care. I don't believe malpractice reform is a silver bullet, but I have talked to enough doctors to know that defensive medicine may be contributing to unnecessary costs. So I am proposing that we move forward on a range of ideas about how to put patient safety first and let doctors focus on practicing medicine. I know that the Bush Administration considered authorizing demonstration projects in individual states to test these issues. It's a good idea, and I am directing my Secretary of Health and Human Services to move forward on this initiative today.
すべてを合計すると、私が提案している改革案には10年間でおよそ9千億ドルかかりますが、これはイラクとアフガニスタン戦争に使った額より少なく、前政権が始まったときに議会が可決した少数の富裕層のための金持ち優遇減税より少ない額です。費用の大部分については、既存の医療システムですでに費やされている財源から拠出します。これらの費用はひどい使われ方をしてきたものですが。この改革案は、われわれの財政赤字を増やしません。中産階級には、より高い税金ではなく、より大きな医療保障を実現します。毎年、1パーセントのほんの10分の1だけでも医療費の伸びを抑えることができれば、長期的には実に4兆ドルもの財政赤字削減になります。
Add it all up, and the plan I'm proposing will cost around $900 billion over ten years - less than we have spent on the Iraq and Afghanistan wars, and less than the tax cuts for the wealthiest few Americans that Congress passed at the beginning of the previous administration. Most of these costs will be paid for with money already being spent - but spent badly - in the existing health care system. The plan will not add to our deficit. The middle-class will realize greater security, not higher taxes. And if we are able to slow the growth of health care costs by just one-tenth of one percent each year, it will actually reduce the deficit by $4 trillion over the long term.
これが、私が提案する改革案です。民主党、共和党を問わず、今日ここにいる皆さんからいただいたアイディアを包括した改革案です。さらにこれから数週間にわたって、引き続き共通の基盤を模索していこうと思っています。本気で真剣な提案をしたいという人は、ぜひ私のところへ来てください。私は皆さんのご意見に耳を傾けます。私のドアはいつも開いています。
This is the plan I'm proposing. It's a plan that incorporates ideas from many of the people in this room tonight - Democrats and Republicans. And I will continue to seek common ground in the weeks ahead. If you come to me with a serious set of proposals, I will be there to listen. My door is always open.
でも、ひとつだけ知っていて欲しいことがあります。この改革案を改善するより葬り去ったほうが政治的に好ましいという打算がある人との議論に、時間を浪費するつもりはありません。特定の利益団体が物事を今まで通りに保とうとお決まりの古い戦術を持ち出しても、私は断じてそれに力を貸したりしません。この改革案の内容を捻じ曲げ、事実を不正確に伝える人には、こちらから呼び出しをかけます。私は現状維持を解決策として受け入れるつもりはありません。今回は譲れません。今はそのようなときではありません。
But know this: I will not waste time with those who have made the calculation that it's better politics to kill this plan than improve it. I will not stand by while the special interests use the same old tactics to keep things exactly the way they are. If you misrepresent what's in the plan, we will call you out. And I will not accept the status quo as a solution. Not this time. Not now.
今日ここにお集まりの誰もが、何もしないでいたら何が起こるか知っています。まず、財政赤字が膨れ上がります。破産する家庭が増えます。倒産する企業が増えます。病気になって保険がいちばん必要なときに、補償を受けられない人が増えます。その結果、亡くなる人が増えます。そういったことが本当に起きるであろうことを、私たちは知っているのです。
Everyone in this room knows what will happen if we do nothing. Our deficit will grow. More families will go bankrupt. More businesses will close. More Americans will lose their coverage when they are sick and need it most. And more will die as a result. We know these things to be true.
だからこそ、私たちに失敗は許されません。この国には、私たちの成功に望みをかけている大勢の人々がいるからです。人知れず苦しんでいる人たち、公会堂での集会、メール、手紙などでその窮状を切々と訴えている人たちです。
That is why we cannot fail. Because there are too many Americans counting on us to succeed - the ones who suffer silently, and the ones who shared their stories with us at town hall meetings, in emails, and in letters.
数日前にも、そうした手紙を受け取りました。それは、私たちの最愛の友人であり仲間であったテッド・ケネディからの手紙でした。テッドは、自分の病気が末期だと聞いて間もなく今年5月にその手紙を書き、自分が死んだら届けて欲しいと頼んでいたのです。
テッドは手紙の中で、今日ここにいる家族や友人、妻のヴィッキー、子供たちの愛と励ましのおかげで、最後の数ヶ月間をいかに幸せに過ごせたかを語っています。そして、今年こそ、「この国の例の大きな未完成事業」と彼が呼ぶ医療改革法案が、ついに可決される年になるだろうと確信をもって表明しています。テッドは、この国の未来の繁栄にとって医療改革がいかに重要な役割を果たすかという真理を繰り返し述べましたが、「制度改革は物質的な物事を超えた精神にかかわっている」ということも私に思い出させてくれました。「私たちが直面しているのは、何よりもモラルの問題なのです。争点となっているのは、政策の詳細な内容などではなく、社会正義の基本理念とこの国の品格なのです」とテッドは書いています。
私はここ数日、この国の品格という言葉について何度も思いをめぐらせました。アメリカという国のユニークで素晴らしい点の一つは、その自立心、たくましい個人主義、激しいまでの自由の追求、そして政府に対する健全な懐疑心です。常に、政府にはどのくらいの規模と役割を与えるのが適当かというのが、激しく、ときには怒りも混じった議論の根源となっています。
テッド・ケネディを批判する人たちにとって、彼のリベラリズムはアメリカの自由とは懸け離れたものでした。彼らの目には、国民皆保険の実現に向けるテッドの情熱は、詰まるところ大きな政府の実現に向ける情熱でしかないと写ったのです。
でも、民主党であれ共和党であれ、テッドを知っていて、ここで一緒に働いたことのある人なら、彼を駆り立てていたものがもっと大きなものであったことを知っています。テッドの友人のオーリン・ハッチはそれを知っています。この二人は協力して、小児の医療保険の給付に取り組みました。テッドの友人のジョン・マケインは知っています。この二人は協力して、患者の権利章典に取り組みました。テッドの友人のチャック・グラスリーは知っています。二人は協力して、身体障害児への医療保険給付に取り組みました。
そういった問題に対するテッド・ケネディの情熱は、強固なイデオロギーからではなく、彼自身の経験から生まれたものです。それは、二人の子供がガンに罹ったという経験でした。テッドの心から、重病の子供をもった親なら誰もが感じるであろう真の恐怖と無力感が消えることはありませんでした。テッドはまた、医療保険に入っていない人にとって、その恐怖と無力感がどういうものなのか想像することができました。妻や子供や年老いた親に、「治る方法はある、でもそのお金がない」と言わなければならないとしたらどんな気持ちがするか、想像することができたのです。
その心の大きさ、人の窮状を気遣い思いやる温かさは、党利などではありません。共和党でもなければ、民主党でもありません。それもまた、アメリカの品格の一部なのです。他人の立場に立って考える能力。私たちはみな共に生きているという認識。誰か困っている人がいたら、他の人たちが来て手を差し伸べてくれるという信頼感。この国では、一生懸命に働いて責任を果たす人生は、安心と公平によって報いられるべきだという信念。そして、その約束を果たすために、ときには政府が介入する必要があるという知恵。これらもまた、アメリカの品格の一部なのです。
それこそが、常にこの国の成長の歴史でした。1933年には、高齢者の半数以上が生計を営むことができず、自分の貯金が消えてなくなるのを何百万人もの人々が目の当たりにしたとき、社会保障年金は社会主義につながると主張する人たちがいました。でも、当時の議員は素早く救済に立ち上がり、今ではそれが良い結果となっています。1965年に、メディケアは政府による医療の乗っ取りであると一部の人が主張したとき、議員は民主党も共和党も引き下がりませんでした。すべての人が基本的に安心して老後を送れるよう、全員が力を合わせて取り組んだのです。
政府はすべての問題を解決することはできないし、またそうすべきではないということを、私たちの先輩は理解していました。個人の自由を制限してまで、政府が介入して安全保障を確保する必要はない場合もあるということを、先人の方々は理解していました。しかし同時に、度を越した統治も危険だが、少なすぎても同様に危険だということも理解していました。知恵のある政策という手を借りなければ、市場は崩壊し、独占が競争を押さえ込み、弱者は食い物にされてしまいます。そしてさらに、先人たちはこういうことも理解していました。政府の法案がどれほど慎重に練られたものであっても、あるいはどれほど有益なものであっても、それがことごとく冷笑の対象になってしまうとき、困っている人を助けようとする行為がアメリカ的でないと非難されるとき、事実と理性が打ち捨てられ、臆病だけが賢明な振る舞いとしてまかり通るとき、そして、真に重要な物事について互いに礼儀にかなった対話すらもはやできなくなってしまったとき、そのときに私たちは、単に大きな難題を解決する能力を失うだけではないのです。自分たち自身についての何か本質的なものを失うのです。
かつて真実であったことは、今でも真実です。私は、医療改革に関する議論がいかに難しいものであったかを理解しています。この国の多くの人が、政府が果たして自分たちの面倒を見てくれるのかどうかについて、極めて懐疑的であるということも理解しています。カン蹴りをするなら、カンはできる限り遠くへ蹴飛ばすほうがよい、つまり改革をもう1年、あるいは次の選挙まで、あるいは次の会期まで先延ばしにするほうが政治的には無難であることも理解しています。
でも、今この瞬間に必要とされているのは、そのようなことではありません。私たちは、そのようなことをするためにここに来たのではないのです。私たちは、未来を恐れるためにここにやってきたのではありません。未来を形作るためにここにいるのです。私は今でも、たとえ困難なときでさえも行動することはできると信じています。今でも、辛辣を礼節に、行き詰まりを進展に替えることができると信じています。今でも、私たちには大きなことを成し遂げる力があると信じています。今すぐこの場で、歴史の試練を乗り越えることができると信じています。
なぜなら、それができるのが、私たちアメリカ国民なのだから。それが私たちの天分、それが私たちの品格なのだから。ありがとうございました。皆さんに神の祝福がありますように。アメリカ合衆国に神の祝福がありますように。
(医療経済研究機構 専務理事 岡部陽二)
(2009年11月10日、医療経済研究機構発行「医療経済研究機構レター(Monthly IHEP)」No.181、p29~43所収)