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簡約 『消費者が動かす医療サービス市場』

 
邦訳版への序文

 昨年、私は日本を訪れ、日本の国の美しさ、人々の規律正しさと活力と知性に大いに感銘を受けた。喫煙率とアルコール摂取量は米国人より高いが、肥満、糖尿病、心臓血管系の病気は少ない。先進国の中でも最長の平均寿命を誇っている。国民皆保険制度があり、このすべてがGDPのわずか8%の医療費で達成されている(ちなみに、米国では14%を占める)。

 だが、日本の医療システムには問題もある。

 第一に、待ち時間の長さ、顧客軽視の姿勢がもたらす非効率性である。度重なる短時間の診療、入院患者のための家族の負担も大きい。医療機関の受診回数は、平均的な日本人の年14回に対して米国人は年4回だが、診療時間のトータルは米国人の方が長い。こうした問題は、高齢化の進展とともに今後ますます深刻化する。

 第二に、ゲノム研究やオーダーメード医療等の先端的分野で、日本の医療産業が敗れ去る可能性がある。

 第三に、長い待ち時間と顧客軽視の姿勢が、他の経済分野の生産性向上を殺いでいる。病院の構造も非効率的である。

 以上のような非効率性の一因は、競争の効用を妨げる均一性にある。消費者側では、医療保険加入者が特定の保険団体に割り当てられ、顧客を巡る医療保険団体間の競争が起こらない。医療機関や医療保険団体について、消費者の選択の目安となる情報がない。医療サービス供給面では、医療機関への支払は均一であって、医療機関の間での差別化へのインセンティブが働かない。

 日本では、医療サービスの価格と公的保険による保障内容の決定権を政府官庁が握っているため、海外で生まれた画期的な新技術の導入が遅れる、あるいは、導入されない。欧米で長く使われてきた重要な抗うつ剤や、安全で低価格な低侵襲手術用の器具が、日本での承認までに長い年月を要している。

 最新技術導入の困難さや政府によって独占的に決定される医療報酬制度も、起業家の障害となっている。新薬や医療技術を、医療機関、消費者、医療保険団体へ直接販売することはできず、認可が下りるかどうかは一か八かの賭けである。これでは医療技術分野が繁栄するはずがない。

 本書には、問題解決の処方箋が書かれている。消費者主権の医療システムは、医療サービスの供給者と消費者の双方を解き放つ。差別化された医療保険商品の提供が促され、価格設定も自由になり、競争が喚起される。医療情報産業が生まれ、消費者は最良の医療サービスを選べるようになる。

第一章 消費者が動かす医療サービス市場

 私は消費者主権という考え方が気に入っている。私自身の学問的経歴も、大学教育の消費者である学生による評価、つまり、消費者主権のおかげである。現在の医療システムは、消費者でも医療機関でもない第三者に支配されており、そのことが多くの問題を生んでいる。医療サービスも消費者主権にすれば、より良質で安価になる。

 米国では1980年代後半に、市場原理の導入を謳ったマネジドケアがもてはやされた。だが、マネジドケアは「とにかくノーと言う」方針で医療サービスの質を低下させ、医療費抑制にも失敗した。私は前著『医療サービス市場の勝者』で、供給側と需要側、医療サービスの提供者と消費者からなる健全な競争的市場が、医療の生産性を上げる鍵であることを説き、大きな反響を得た。

 この反応に力を得て、私は1999年、ハーバード・ビジネススクールで大がかりな「消費者が動かす医療サービス会議」を主宰した。消費者が医療サービスを動かす日の到来は、いよいよ近いと感じている。

第二章 確定給付型医療保険に対する不安と嫌悪

 私にとって確定給付型の医療保険給付の選択作業は憂うつである。一方、投資家が投資ポートフォリオを自分でデザインできる401kプランのような「確定拠出型」企業年金給付の選択は楽しめる。真の選択肢と決定権と情報があり、自分が賢く有能に感じられるからである。

 消費者が自ら運用する401kプランは、専門家の運用する確定給付型に比べ、好況期のみならず、90年と93年から94年の株式市場低迷期にも高い運用実績を上げた。これは、消費者主権の知恵を示すものにほかならない。

 一般の消費者に医療保険商品を自分で選択して購入する能力があるのか疑う声もあるが、平均的な消費者はコンピューター、車、投資信託等の複雑な商品を驚くほど的確に買っている。市場価格は小数のしたたかな消費者によって形成される。最後の最後まで買わない一群の人々の自己主張が、すべての消費者に利益をもたらす。高学歴化で自己主張と自信を強めており、インターネットで医療情報を探索し、得た情報を積極的に利用している。

 このような教訓を消費者主権の医療システムに生かせば、(1)雇用主企業は今後も医療保険給付を行い、保険料の負担を続け、(2)従業員は医療保険に加入し、健康状態の向上に努め、(3)起業家精神に富む企業が、革新的な医療保険や情報商品を提供し、(4)医療保険給付を行う小企業が増えるに違いない。

第三章 確定給付型医療保険--破綻したセーフティー・ネット

 現行の確定給付型医療保険は誰にとっても利がなく、むしろ害になる。選択肢は数が少なく、給付内容、免責額、期間等も大同小異で、真の選択肢がない。

 満たされないニーズも多い。慢性病患者は組織的なケアを受けられない。中流の米国人は、処方薬、長期療養など、高額の医療費負担にあえいでいる。禁煙プログラム等、健康維持に役立つ広範な支援がカバーされていない。入院期間の短縮が医療機関の減収につながる等、誤った経済的インセンティブのおかげで、従業員と雇用主企業は労働時間と賃金の損失を被っている。

 雇用主企業は、医療保険給付を最も重要なフリンジ・ベネフィットと見ているが、医療保険料の負担は重い。

 医師も治療方針の外部審査等、さまざまな制限があり、満足の行く治療ができない。保険会社が治療の範囲と料金を細かく決めているため、患者のレセプト診断名を操作する医師もいる。患者に自助能力をつけようとする医師は、現行の医療保険制度では報われない。

 保険会社も満足していない。二〇〇〇年には一八社のHMOが、前年の九九年には二四社が倒産している。歴史のあるエトナ保険も、消費者の視点を忘れて収益を落とした。マネジドケアの「とにかくノーと言う」戦略は明白な失敗であった。患者の権利保護法等もあり、今後、この戦略に頼った医療費削減は見込めない。

第四章 消費者が動かす医療サービス市場--解決の方法

 世界の医療制度を支配しているのは、消費者以外の第三者である。米国では、保険会社と雇用主企業が、ヨーロッパ、アジア、南米、中東の大半の国々では、官僚が支配している。消費者の姿はどこにも見えない。

 米国の医療保険システムが抱える問題とその解決の道を、「朝食保険」の喩えで説明しよう。朝食抜きの従業員の問題に頭を悩ませた会社が、朝食保険を用意したとする。保険会社は一社で、保険料は人頭払いである。

 ところが、誰もが飲食店で高価な朝食をとるようになると、朝食の価格は暴騰した。懸念を覚えた会社は、管理朝食保険会社を利用することにし、保険対象品目を標準化した。特定の管理朝食プランに保険料補助をつけて自己負担額をゼロにした。朝食学者も朝食エコノミストもこの方針を誉めそやした。

 やがて、少数の飲食店が力を増し、値上げを要求した。従業員は好みの飲食店が利用できず、慢性病等の特殊なニーズに合った朝食をとるにはゲートキーパーの承認が必要になった。飲食店は品質を犠牲にしてコストを抑え、才能ある料理人の多くが業界を去った。朝食は無保険者と自営業者には手が届かないものになっていた。

 会社は改革に乗り出した。消費者主権の朝食保険に転換し、朝食保険プランの選択肢を増やした。飲食店がセット・メニューに独自価格をつけられるようにした。どの保険プランにも同率の保険料補助を行なった。保険会社への支払いは、加入者のニーズに応じたものにした。こうしたシンプルな改革によって、わずか数年で事態は改善した。誰もがおいしくて栄養のある朝食を楽しめるようになったのである。

第五章 消費者が動かす医療保険--有効な方策

 消費者主権の医療保険商品に不可欠な特徴とは何であろうか。(1)賢い買物のためのインセンティブ、(2)実質的に差のある医療保険プランの選択肢、(3)医療機関の選択に役立つ情報、(4)各医療保険プランへの均等の補助、(5)保険会社が医療機関に代わって医療サービスの価格を決定しないこと、(6)加入者ごとのニーズを反映した支払額である。

 最後の点は重要である。健常者にも特殊なニーズを抱えた従業員にも一律の保険料価格では、保険会社がコスト増を避けようとして逆選択を招く。リスク補正を行い、ニーズごとに差別化した価格にすれば、雇用主企業が負担する全体のコストは上がらず、むしろ競争と革新によってコストが下がる。

 革新的な医療保険商品がすでに生まれつつある。現在ある消費者主権の医療保険商品は、個人医療口座、サービス選択の意思決定支援、医療サービスの給付設計、医療保険プランのカタログ提供、必要な時点か事前に決める医療機関の選択肢のいずれかの特徴を備えている。

 消費者主権の医療サービス市場は、セーフティー・ネットとして機能する。(1)差別化された医療保険商品によって、消費者は自分の求める保障や給付内容を得られる。(2)医療機関が医療サービスの独自のパッケージを設定し、独自の価格で提供できるため、慢性病患者への予防的、組織的な治療と支援を行う医師が報われる。(3)団体保険市場で始まった革新的医療保険商品は、やがて個人市場にも広がり、比較的裕福な無保険者にも広がっていく。(4)従業員と雇用主企業は、消費者から見た利便性を重視する消費者主権の医療保険商品に出会える。(5)革新によって医療費がほどほどに抑えられ、低所得層の無保険者へのセーフティー・ネット拡大が容易になる。

第六章 消費者が動かす医療サービス市場と医療サービスの生産性

 消費者主権の医療サービスは、医療サービスの質を高めると同時に、医療費抑制を可能にする。しかも、それを必要な医療サービスを切り詰めることではなく、医療の世界に変化を起こし、生産性向上を促すことによって行うのである。それはどのようにして可能であろうか。

 前章で述べた消費者のニーズに適った医療保険の開発に加えて、医療界は消費者の要求に応え、三つの新しいタイプの重要な革新を打ち出そうとしている。すなわち、フォーカスト・ファクトリー、診療記録情報の一元管理、患者一人一人に適した個別性の強い医療技術である。

 一つめのフォーカスト・ファクトリーは、診療科別に細分化された医療機関を、患者の医療ニーズを中心に組織化するものである。これは、長期的な健康状態の改善につながるだけでなく、慢性病の治療にかかる直接の費用の節約をもたらし、欠勤による損失、早死と障害による損失を抑えることにもつながる。

 ジョージア州の総合鎌状赤血球貧血センターは、この病気に特化して二四時間の包括的な医療を提供している。八年間で入院日数を半減させ、救急治療室の利用を八割減らした。患者一〇〇人当たり一二〇〇万ドルの節約である。問題は個々の医療機関の資質ではなく、組織的な医療システムが存在しないことである。

 二つめは、診療記録情報の一元管理である。これは現在あちこちに点在している診療情報を、一つの包括的なシステムにまとめるということである。筆者は七〇年代からこの必要性を訴えて続けてきたが、一向に状況は改善していない。

 三つめは、個々人のニーズに合わせて設計される個別性が強い医療技術、具体的にはゲノムに基づく診断、病気の原因となる遺伝子の差に応じた薬剤、私たちの体の働きをモニターできる医療器具などである。個別性の強い新しい医療技術は、医療費に過大な負担を強いるものと思われがちだが、それが医療費全体と経済全体の生産性に及ぼす効果は大きい。それは、コンピューター化が産業全体の生産性を押し上げたことをみれば明らかである。

 医療サービスをめぐる長年の議論では、医療費の大半を使う肝心の病人のニーズが見落とされてきた。病人への医療サービスの改善は医療費抑制につながる。病人が求める焦点が絞られ、健康増進に役立ち、組織化された医療機関グループを手に入れる最善の方法は、それを提供する努力を奨励し、それに報いる消費者主権の医療システムを確立することを措いて他にない。

第七章 消費者が動かす医療サービス市場--静かなる革命

 米国の全土で、静かなる革命が起きている。革命家たちは互いの存在に気づいておらず、方法論や流儀も一見まちまちであるが、そこに新しい消費者主権の医療システムのパターンが見える。

 ある者は医療保険の改革を、ある者は医療における価格と品質に関する情報の改革を、医療におけるサービスと技術の改革を、ある者は医療における政府の役割の改革を目指している。

 医療機器分野のトップ企業、メドトロニック社の元社長ビル・ジョージもその一人である。従業員に医療サービスを購入するための資金を与え、多くの選択肢と情報を与え、余計な口出しは控えた。

 医療保険数理士のレイ・ハーシュマンは、自動車業界並みの競争を医療サービスの世界に持ち込もうと考えた。幅広い選択肢の中から消費者が医療保険商品を直接選べるような市場、つまり、医療保険のスーパーマーケットを構想し、ヘルスシンクと名付けた。多様な選択肢を確保するため、同社は保険会社の商品設計に何らの制約も設けなかった。

 伝記作家のグレゴリー・ホワイト・スミスとスティーブン・ネイフェは、医者探しで苦労した経験に基づき、病人が自分の問題に応じた「最高の医師」を選べる仲介サービスを始めた。そこには、三万人以上の医師が登録されている。

 心臓外科医デントン・クーリーは、開心術と他のいくつかの心臓血管系手術についての質の向上と費用の低減に一身を捧げている。

 ミレニアム製薬の社長マーク・レヴィンはその人その人の遺伝子の構成が持つ特性に、薬の特性を合わせることによって病気を治そうというデザイナー・ドラッグを扱っている。

 今や、ほとんどあらゆるタイプの政治家が、消費者主権の医療サービスを唱えている。ディーン・クランシーは、以前からFSAや医療貯蓄口座(MSA)の「使い残したらおしまい」という障害を是正するよう訴えてきた。

 筆者自身も、医療サービス版SEC(証券取引委員会)の設立が、透明性と効率性という効果を医療サービスの世界にもたらすと主張する革命家である。

第八章 消費者が動かす医療サービス市場における政府の役割

 消費者主権の医療サービスに反対したり、それを恐れたりする多くの人々は、何らかのフィルターを通してイメージを描いている。消費者は市場において弱くて自信のない存在で、保護と指導が要るという専門家集団のフィルター、既得権益を守りたい人々が使うフィルター、国民皆保険理想論者のフィルターなどである。こうしたフィルターの影響で、消費者主権の医療サービスに関して改革の実現性に疑問を呈する数々の怪談が広く流布されているが、いずれも、まったく根拠がない。

 消費者主権の医療サービスにはさまざまな敵がいる。専門家集団もその一つである。消費者には情報を賢く利用できないと思い込み、監督権を手放そうとしない。だが、医療サービス市場でも、十分な情報と選択肢が与えられれば、頑固でうるさい限界的な消費者が競争的な市場を形成してくれるはずである。

 専門家は消費者が有益な医療情報を利用していないと言うが、それは消費者のニーズに直結する治療成績のアウトカム・データが乏しいからである。医療サービスの成績データの公表には、それにかかるコストを上回る効果がある。患者数が少なくて信頼性のあるデータを出せないような病院は避けたいのである。今日の消費者は詳しい情報を求めており、必ずそれを手に入れるであろう。

 専門家集団はまた、リスク補正にも反対し、価格を中央で統制したがる。だが、市場価格は誰にもシミュレートできない。標準コストによる移転価格の失敗は、タイム社の製紙部門の例からも明らかである。保険会社が高リスクや低リスクの加入者に自由に価格設定できる時、市場の力によって保険会社は否が応でも効率的で実効的にならざるを得ない。

 企業内で医療サービスに関わる人事専門担当者も改革に抵抗する。彼らは自らの権限がそがれるのを恐れているのである。一部の団体医療保険会社も既得権益を守るために、消費者主権を歓迎しない。

第九章 医療サービス版SEC--掛け値なき真実を求めて

 米国人はマネジドケアに心底、腹を立てている。政治家もこの問題の解決に立ち上がった。彼らによる患者保護法案は、たいてい、専門医や病院の利用を容易にするなどの医療給付を義務づける内容を満載したものである。だが、万人向けの医療サービス戦略は、うまく行かない。給付内容の義務化は、その意図とは逆に医療費の費用対効果を高めてくれる革新の芽をも摘んでしまう。

 マネジドケアに関する消費者の不満の核心は、彼らに選択肢と決定権が与えられていないことである。良質の情報があれば、そして、医療保険プランと医療機関を選ぶ自由があれば、消費者は最適状態を見つけることができる。

 それでは、"効率的な"市場はどのようにして成立するのだろうか。証券市場を見ると、効率性を確保する決定的要素はSECである。SECは一九三四年、ルーズベルト大統領によって、小規模投資家の保護を目的として設立された。SECは「真実」を扱う機関であって、すべての重要な事実が完全に公開されるようにするのが使命である。

 だが、市場の効率性にとって核心的な情報の大半は、SECからではなく、企業、FASB(米国財務会計基準設定審議会)、専門の会計士という、民間の三つの集団から出されている。

 米国の証券市場はまさしく、マネジドケアの消費者が求めている次ぎのような特徴を備えている。

①価格が、一般に入手可能なすべての情報を反映しているという意味で公正である。②買手がこの情報を用いて効率的な組織に報い、非効率的な組織を排除する。

③情報と競争が取引にかかるコストを継続的に減少させる。

 医療サービス市場にこうした特徴があれば、消費者は割に合わない買物を押し付ける保険会社や医療機関から、割に合う買物ができるところへ資金を移し変えることができる。

 医療保険市場でSECモデルが持つ望ましい持ち味を発揮させる鍵は、SECに不可欠な要素を取り入れた医療監視体制の法制化である。

第十章 消費者が動かす医療サービス市場:実現への道

 消費者主権の医療サービス改革の原動力は、雇用主企業、促進者は保険会社と医療機関、監督者は政府であり、そして、財源は一般大衆に依存している。それぞれの役割を、以下にまとめよう。

 変革の原動力としての雇用主企業とその人事部担当者は、保険会社や医療機関を自ら細かく管理することを止めて、主導的な管理、選択肢の設定、情報の提供によって従業員に力をつけるという方向に転換する必要がある。従業員に力をつけるような枠組みを創りださなければならない。

 変革の促進者としての保険会社と医療機関は、消費者にやさしく、良質で低コストの革新に呼応すべきである。保険会社は真に差別化された医療保険商品のラインナップを送り出さねばならない。医療機関は、フォーカスト・ファクトリー、組織化された情報、個別化された医療技術を通じて医療サービスの提供過程を徹底的に再編する必要がある。また、両者は協力して成績評価を行わなければならない。

 変革の監督者としての政府は、医療保険商品の構成や医療機関への支払に関する細かい管理を止め、保険会社や医療機関に不正がないか監督し、結果に太陽の光を当てることが必要である。

 変革への財源拠出者としての消費者は、無保険の低所得者が直面している困難な現実から目を背けるのを止め、新たな消費者主権の医療システムの恩恵を誰もが受けられるようにすべきである。

 こうした変革には献身と根気が要求される。医療サービス分野には多くの強力な特殊利益集団が存在し、この革命を自分たちの都合の良い方向にねじ曲げようとしているからである。原則はただ一つである。すなわち、すべての変革は、医療サービス消費者のためになるものでなければならない。

 読者諸賢のご健勝をお祈りして!

(2004年1月20日、日本HIS研究会発行「HIS REPORT 70」 (通巻70号)p2~3 および2004年5月31日、日本HIS研究会発行「HIS REPORT 71」 (通巻71号)p2~3 所収)

 

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