話し手: 湖山医療福祉グループ代表
湖山 泰成 氏
聞き手: 医療経済研究機構
専務理事 岡部 陽二
今回は、「自らが受けたいと思う医療・介護・福祉サービスの創造」をモットーに、そのサービス拠点を全国的に展開し、地域のなかで高齢者から選ばれる施設の拡大を目指すだけではなく、このようなサービスに従事する介護福祉士やケアマネジャーなどプロの育成に重点注力しておられます湖山医療福祉グループ代表の湖山泰成氏から、その経営理念を中心にお伺いしました。
湖山泰成氏は銀座菊池病院の経営再建を任された父親の湖山聖道氏をサポートするために、銀行マンから転身、平成3年にグループ代表に就任来、全国各地で病院から老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護などさまざまな形態の医療・介護などサービス拠点を湖山医療福祉グループとして増やしてこられました。
本年6月1日現在では、グループ内の法人数27(うち医療法人9、社会福祉法人6、株式会社11)、サービス拠点数123ヵ所、事業所数282(北海道から島根県まで、2病院ほか24種の施設形態に分かれる)、職員数4,369名(うち常勤3,298名、介護職常勤1,961名)で、本年度の新規採用約600名と急拡大を続けておられます。
湖山医療福祉グループの経営方針・手法は、他の大手医療・介護複合体とは一線を画し、利益の極大化ではなく、地域社会から望まれるサービスの実現に時間を掛けて挑戦し、「弱者の生き方」の実践を理想としておられる点がユニークです。
〇湖山医療福祉グループ設立の経緯
岡部 湖山医療福祉グループの事業内容の展開は、医療から介護事業(訪問・通所・短期入所生活・特定施設入居者生活介護ほか)、有料老人ホームの経営など多角的です。方向としては、介護・福祉サービスを基盤として、これに必要な医療を加え、高齢者が豊かな生活を実感できる総合サービスの提供を目指しておられるものと理解しておりますが、まず、湖山医療福祉グループの歴史と企業理念についてお聞かせ下さい。
湖山 私の父は一高から東大の医学部を出たのですが、東大の恩師がすぐ亡くなられましたので、当時設立されたばかりの虎の門病院へ行かざるを得なくなり、有名な沖中重雄先生の沖中内科でずっと消化器から成人病の患者さんを専門に診ていました。
その後、銀座菊地病院が開設されたときに菊池先生から副院長で招聘されたのですが、銀座の一等地に立地するこの中小民間病院は、救急までやっていて経営的には大変厳しく、結局、父はこの財政難に陥った銀座病院の経営再建引受けを余儀なくされたのです。
岡部 そこで、お父さんに頼まれて、27歳で銀行を辞めて、その病院の再建に乗り出されたわけですね。
湖山 そうです。父は医師としては一流でしたが、民間の企業経営はわからないので、私が経営を手伝わざるを得なくなったのです。診療報酬は全国一律に一点10円ですから、わずか100床の銀座の民間中小病院が890床もある虎の門病院と同様の救急医療までやっていたのでは、採算がとれるはずがありません。そこで、まず銀座病院は縮小して、地方展開を考えたのです。
岡部 経営戦略としては、見事ですね。ただ、その当時の病院業界一般は増床志向で、いかにして増床するかを競っていた時代に、せっかく築かれた日本のど真ん中にある病院を縮小してまで、地方に展開するという決断をされたのはすごいことですね。
湖山 銀座には土地がなく、増床するために隣地を買い増すことは不可能でした。また、父の専門がたまたま消化器、成人病ですから、高齢者がさきに増えてくる地方のほうが適していると考えたのです。
岡部 その経営戦略にお父さんも積極的に賛成されたのでしょうか。
湖山 ええ。一つには、やはり、銀座での環境というのは、VIPの患者さんが多く、非常に質の高い医療を求められるわけです。父は内科医ですから、がんの手術には国立がんセンターや虎の門病院をご紹介するなど、病診連携で対応できました。救急機能はもっと大きな病院で引取ってもらうほうが効率的であることがわかりました。そこで、結局は病棟を潰してクリニックに転換して、人間ドック・センターを作りました。
岡部 病院のリストラ、縮小の方針はわかりますが、介護サービスという概念がようやく芽生え始めた20年も前に、介護に経営資源を重点投入しようという発想がどこから出てきたのでしょうか。
湖山 それはやはり、一つには私自身が医師でなかったという点があると思います。都内の病院を回っても、当時から150床以下の民間病院はやがて成り立たなくなると言われており、客観的に環境変化をとらえることができました。もう一つは、父自身が開業段階から自分で病院を創っていったのではなく、サラリーマン医師でやっていたので、欲が少なかったこともあります。でも、やはり、正直に申しますと、病院の院長であった父が診療所の所長になるというのは寂しいものです。
岡部 それはそうですね。
湖山 当時、父は土日祭日も患者さんを診て、夜も遅くまで救急に入って、一日24時間365日ぶっ通しで働いていました。このやり甲斐のある医師が、病院を閉鎖して、突然、土日祭日休みで、8時半から6時で終わる診療所に転換したのです。そうすると、それで売上が1割上がって、外来の利益が一挙に倍になったのです。これは、世の中どこか間違っていると、父は怒っておりました。
そこで、私も若かったし、父がたまたま内科でしたから、虎の門病院が川崎市で分院として運営している療養型の病院をモデルにして、慢性疾患患者を対象とする療養形態の病院を創ろうと考え、静岡に適地を見つけました。
岡部 静岡は、温暖で療養型にはよいところですね。
湖山 いろいろ調べてみますと、当時その手のリハビリテーション病院などの多くは御殿場とか伊東にありましたが、この辺りの冬は寒く、湿気が高いのです。そこで、新幹線でもう一駅先の富士市が、富士山ろくで海も近く温暖で雨が少なく、平均気温も安定しているので、ここに療養型中心の「湖山病院」(現在288床)を開設したのです。結果的には、ここは内科系の長期療養というよりは、この地域にお住まいの老人患者さまですぐに一杯になってしまいました。
このように、自然な流れの中で、銀座の救急病院をリストラした結果が、富士市での高齢者患者中心の療養型病院になってしまったわけです。このとき、銀座病院の個室には結構裕福な患者さまがおられたので、快適な富士市の病院への転院をお勧めしたのですが、どなたにも応じてもらえませんでした。「箱根の向こうへ行くと鬼が出る」という時代でもないのに、要するに、高齢者は住みなれた地域から動くのに抵抗感が強いことがよくわかった次第です。
岡部 お父さんは、そうすると、東京で銀座医院をやりながら、静岡にも行かれて、新幹線で1時間15分といっても、また忙しくなられたのですね。
湖山 実際には、湖山病院は父の友人の先生に院長になっていただき、私が経営を担当しました。私は医者でないので、都心の院長先生方を回って教えてもらったり、当時ちょうど米国から戻られた河北先生主催の勉強会に入れていただいたり、青梅慶友病院の大塚先生から高齢者向けの専門医療の実践を学んだりしました。
〇介護保険事業中心の多角化展開
岡部 湖山医療福祉グループは、高齢者医療から、介護中心に拡大されて、123ヵ所のサービス拠点にある282の施設や事業所が、連携しながらも、基本的にはそれぞれ独立した経営体として、地域の実情に即した運営をしておられるものと理解しています。そのような介護主体のグループ経営方針に到達された経緯をお聞かせください。
湖山 今では、医療は1割そこそこですから、湖山グループは実態的には介護保険事業者です。救急病院から始まって、介護保険事業施設のほうへ裾野を広げてきたのは、世間一般とは逆のようですが。
岡部 逆を行くといっても、現実に需要がある介護分野を志向されるのは、無理のない発想かと思いますが。
湖山 銀座病院を診療所や健康管理センターにリストラしながら、自分の力とノウハウで、富士市に高齢者医療の病院を創りました。これまでの経験から、それを大きくして、高機能に特化していくよりも、老健、グループホーム、デイサービスなどへむしろ裾野を広げていくのが自然と考えたのです。私は、これを「シフト・ダウン」と言っているのですが。
岡部 それにしても、東京のど真ん中でやっておられた繋がりから、都内で介護サービスを展開されるのは分かりますが、まったく逆の青森県や島根県など過疎の地方に目を向けられたのは、どういう動機からなのでしょうか。
湖山 地方に目を向けたのではなくて、東京都心部では経営的に難しいのです。コストが高いだけではなく、患者さまも目まぐるしく変わるので、蓄積は生きてきません。時間を掛けて培った信用と実績は地方では活かされます。
岡部 地方には、本当の高齢者介護や医療の需要があるということですね。
湖山 1点10円の公定価格の世界では、銀座で大変苦労しましたから、銀座でやれたということは、日本中どこの地方へ行ってもやれるという経営的な自信がつきました。東京での経験があれば、どこへいっても怖くないということで、一気に、地方へ行ってしまったのです。
ただ、よく聞かれるのですが、私どもには地方展開のマーケット・リサーチや経営戦略は何もないのです。たまたま、富士市に湖山病院を開設した当時に同時並行して、たくさんの大企業が、リゾート開発に関連していろいろご相談に来られました。結局、リゾート開発はうまくいかないケースが多かったのですが、東京しか知らない私は苗場山麓にある昔ながらの雪国らしい山村を知って、カルチャー・ショックを受けました。
岡部 すごい感性ですね。
湖山 こういう農村地の高校を卒業した若者のほとんどは、都会へ行ってしまうのです。給料をもらえる職場は、役場とか農協とか学校しかないわけですから。それを見まして、これは医療よりも、この地域の高齢者を、この地域の施設で、この地域の若者が働いて面倒を見るということの意義を痛感したのです。これこそが、地域の産業を興し、雇用を促進する事業、すなわち町づくり・村づくりではないかと。何人かの町長さんと話をしているうちに、そういうところでは、町立病院と特養と診療所はあるものの、老健や介護施設はないことがわかったのです。
そこで、苗場のリゾート開発でご縁のあった新潟県の津南町に特養を寄付する気持ちで、社会福祉法人を設立し、介護老人福祉施設「みさと苑」(現在入所定員;110名)を手始めにグループホームなどを創っていきました。
岡部 当時から、短期滞在型ではなく、医療機能やリハビリもできて亡くなられるまで面倒を看るという方針で、老健の経営をしてこられたのは、ご立派ですね。
湖山 当時から、老健も採算は度外視して、特養的な考え方で、社会福祉事業として始めたのです。病院並みの医療やリハビリを提供し、特養並みの終身介護や福祉の気持ちを持つのが、「これからの老健」ではないかと考えたのです。老健は病院と在宅のあいだの繋ぎとしての中間施設との見方もありますが、私どもは、長期間お預かりするという高齢者ニーズに合った幅広い機能の施設を創らざるを得ないと考えたのです。
これは、経営的には、馬鹿げたことです。経営というのは、自分の専門に特化し、機能を高め、ブランド力を高め、差別化し、費用を高くし、利益を大きくして行くことです。ところが、私どもは時代に逆行して、百貨店方式で、広い範疇のサービスに経費をかけて、幅広く何でもやれるようにしたのです。ですから、これは経営コンセプトとしてではなくて、地域社会の中での医療福祉事業の本来の在り方として考えた回答です。
皆さんから、老健や介護施設の経営的なコンセプトや戦略を聞かれますが、そんなものはまったくなかったのです。たまたま行きがかり上、私の人生観で始めた事業です。
岡部 それはわかりますが、社会福祉事業であっても、これだけ大規模な事業をおやりになるからには、利益を上げないにしても、採算がとれないことには、拡大できません。拡大再生産のための収支均衡と社会貢献との兼ね合いは、大変難しいのではないかと思いますが。
湖山 そうです。結果論ですが、患者さまを3カ月で出すといった方針では、いわば救急介護と同じで、頻繁な出入りにすごく労力がかかり、ベッドの稼働率も落ちます。ところが、私どものように追い出さないという方針でやると、実稼働率が100%近いわけです。出入りが少ないから、地域の方にも安定感を持ってもらえます。3カ月で回して80%稼働するのと、長期滞在で97%稼働するのとでは、差し引き収支の面でもそんなに変わらず、むしろ、安定します。
岡部 なるほど。すると、老健での平均滞在日数は、2年とか3年とか長いのでしょうか。
湖山 それほど長くはありませんが、湖山グループの老健は通常の老健よりはかなり長いです。私どもが、ほかの施設経営者が経営的に利益を上げるためにとやっておられることのまったく逆をやっているのは、まさに、そこに社会ニーズが残っているからです。
岡部 病院は療養型でも3カ月で追い出されるようになりましたから、亡くなるまで預かってもらえるのは、入居者にとっては大変ありがたいですね。
湖山 しかも、病院から出ると元気になります。病院の中では廃用症候群的になった方が、私どもの老健や特養では、薬漬けにしない、抑制しないで自由にして差し上げるので、要介護度が下がって元気になられるのです。
最後は病院で亡くなられるにしても、ギリギリまで世話を看るという施設側の気持ちや、信頼感というのが、家族の方にすごく安心感を持たせるのです。私どもは、いざというとき救急で入れますよ、在宅に一度戻しても、また何時でも戻ってくださいという姿勢です。私は、介護にも救急があるという論者なので、各施設とも、ケアプランがなくても、月に1、2名は救急でポンと受け入れることがあります。理想的なことをやっていることが、決して経営的にも負担ではなくて、やはり信頼が高稼働率に繋がり、さらには職員のモチベーションも高めます。これは、湖山グループが創業来25年かけて作ってきた企業風土です。
岡部 それは、よくわかりますね。でも、そういう経営方針を、282もある事業所のマネージャー全員に徹底させるというのは大変なことですね。
ところで、施設や事業所は、全部グループで保有されているのでしょうか。
湖山 そうです。法人数は27あっても、すべて、私が創業者でオーナーです。資金を他人に出してもらうことはありませんが、多くの施設は、町から招聘されたり、町の病院の跡地をお借りしたりしていますから、町の行政の担当者とか町長さんにも法人の役員に入っていただいたりはしています。経営状況も公開しており、法人や施設の名前は町長に付けてもらうとか、地域の住民に選んでもらうとかしています。
岡部 282もある施設や事業所を自主経営に任せておられるのは、素晴らしい経営手法ですね。
湖山 基本的には、そうです。本部での共同購入なども一部の資材についてはやっていますが、購入量が多いのは食材などですから、地産地消で地元の農協から買っています。また、相談員などが使うミニカーも何百台も持っており、これも東京で一括購入してもよいのですが、それよりも、「私はピンクのホンダがいい」とか、「私はブルーの日産がいい」というふうに、自由に選べるところが、職員のモチベーションを高めます。私は、そのほうを重視しています。最近では、山形県で高齢者の小規模アパートを10軒建てたのですが、これは設計が同じなので、所長が建物の壁の色を選べるようにしました。
つまり、そういった個別性とか、現場が好きなようにやれるということで、現場の思い入れが強いほうが、オーナーの私が決めるよりもよいという考え方です。担当者のそういう多様性とか趣味を生かすようにすると、私のセンスを超えたものができるわけです。
〇全国一律の診療報酬・介護報酬の矛盾
岡部 湖山グループの収入は、おもに介護保険、一部医療保険に依存しておられるわけですが、診療点数や介護報酬が、銀座でも、瀬戸内海の小島でも同一というのはおかしいと主張しておられますね。
湖山 そうです。銀座から発祥した元祖ということもありますから。私は、銀座というのは、医療保険、介護保険のカナリアだと思っています。つまり、一番経費がかかって、一番大変で、銀座が一番弱いから、銀座で悲鳴を上げるようなことは、これから全国に波及していく。銀座で最初に問題点を体験するわけです。
岡部 一酸化炭素は人間には感知できないけれども、カナリアは敏感に感知する、炭坑につるした篭のカナリアですね。世の中、悪い方向に変わっていくということを、まず最初に体感するわけですね。
湖山 そうです。以前には、東京の病院会で、安藤高朗先生の勉強会に入って議論を重ねました。データも出して計算すると、東京の診療点数は1点11円60銭ぐらいにしないと、地方との格差がなくならないのです。逆に言うと地方では利益が出ても、東京はみんな赤字ということですから、1点10円で全国一律はおかしいのです。
岡部 そうですね。
湖山 これは是正されるべきですが、現在でも日本医師会は全国一律にこだわっておりますので、残念ながら医師会、病院会の内部では、この考え方は通りません。でも、全国一律は悪平等なので、たとえば、東京は東京特区にして、1点を11円にすべきと思っています。
岡部 土地代もさることながら、労賃でも相当違いますね。
湖山 ええ。わかりやすいのは、湖山病院と銀座病院で経費を比較すると、交通費だけでも、東京では銀座に住んでいる人はいませんから、一人当たり毎月25,000円以上掛かります。ところが、富士市では、近隣の人が多く、ガソリン代の5,000円とか7,000円で済みます。1人当り20,000円も違うのです。住宅手当も、30,000円ぐらいは違います。100人いると、これだけで年間6,000万円の経費が余分に掛かるのです。これが、利益が出るか、赤字になるかの大きな要因です。上下水道代も東京都が一番高く、同じことをやっていても、インフラの経費と固定資産税だけで、年間1億円くらいは違ってきます。
岡部 やはり、介護報酬や診療報酬に地域格差を付ける必要があるということですが、それには反対の人が多いわけですね。
湖山 もう一つの私が指摘しています矛盾点は、特養の新設分は個室ユニットしか認められないのですが、老健、病院の場合には、逆に全部個室で作っても、個室料は半分しかいただけません。特養の個室単価は行政から制限を受けていますから、全部個室料をいただいてもちょっとマイナスになるのですが、同じような機能の老健で全室個室料がいただけないのは理屈が合いません。
岡部 生活の場である特養の個室ユニット化は、思い切ったよい施策であったと評価していますが、病院については急性期が念頭にあるのでしょうね。
湖山 問題は老健です。私どもは、首都圏では、老健を全部個室で作っているのですが、現在のところ、半分しか個室料がいただけないので、赤字が嵩みます。せめて、コストの高い東京だけでも、全個室で作らせるのであれば、差額ベット代はいただけるようにすべきと主張しています。他方、将来的には、特養は全個室でないとダメだと思いますが、現実的には、現状では半分ぐらい個室で、半分ぐらい4床1室棟が残っていてもよいのではないかと思っています。
岡部 病院はともかくとして、老健はおかしいですね。老健と特養などの介護施設とどう違うのかということになりますね。
湖山 もう一つは、介護報酬の水準です。全国レベルでいうと、地方の開業医さんはどうしても高所得者ですから、医師は儲かっていると思われています。そうすると、老健、特養でも、トップの理事長や院長の多くは医師ですから、高所得という誤解が、国民にもマスコミにもあるように思います。
しかし、介護保険事業者にとっては、法人が儲けるとか、経営者が儲けるのではなくて、現場の介護ワーカーさんたちに、もう少し、世間並みの生活ができるような給料を出すことが不可欠です。静岡にある私どもの老健のすぐ近くで、最近オープンしたスーパー・イオンのキャッシャーの時給が1,500円です。
岡部 それは高いですね。東海地区は豊かですが、一般には時給1,500円は出せないですね。
湖山 出せないです。そうなると、給料の低い介護分野へは、構造的に人が来なくなります。
岡部 そうすると、やはり、将来の方向としては、介護サービスについての報酬は引き上げざるを得ないですね。
湖山 私は、やはり、自費の部分も含め、現在の低い介護報酬ではやっていけなくなると見ています。否が応でも、国の財政的な軛から、介護報酬も抑制の方向へ行っていますが、皆保険制度のなかでも、基本として絶対に守るべき部分と、介護保険から外して自由化すべき部分があると思います。
岡部 外すべき部分というのは、一応分離はされたものの、必ずしも徹底していない食費や住居費の生活部分になるわけですね。
湖山 そうです。一番は、室料の部分です。室料の軛を外すには、高齢者マンションにしろ、老人ホームにしろ、病院にしろ、部屋代は基本的にはそれぞれの地域相場で決めるのが筋です。
岡部 それともう一つ、湖山グループでやっておられる施設形態は10種類(介護療養医療施設、診療所、老人保健施設、特養、養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、高齢者対応共生住宅、小規模多機能型居宅介護)あり、法人形態も医療法人、社会福祉法人、NPO、株式会社など多岐にわたっています。しかも、それぞれの施設は小規模ですから、顧客のニーズに合わせるのは大変でしょうね。異なった施設形態はいくらあっても、不都合はないのでしょうか。
湖山 厚労省が打ち出して来る施策や施設形態が、次の時代の中心になるので、新しいものをドンドンやっていくしかありません。新しい施設体系ができると、そちらへ利用者が流れますから、それをやらないと、その分だけ、お客さんが逃げて減っていくだけです。新しい施設体系には、利益が出るように点数も付き、補助金などが出ることもあるので、メニューを増やさざるを得ないのです。
施設形態だけではなく、私どもは厚労省が作った50近くあるゴールドプランのサービス・メニューを全部やっています。これは、赤字の部分もありますが、とにかくトータルで考える百貨店方式です。みなさん、経営資源の一点集中とか、ブランド化とか、地域ドミネントとか、一つで大型化すべきとか、おっしゃいますが、私どもは逆をやってきました。その百貨店方式の中で、つねに先の変化が予測できるのです。しかも、厚労省の政策にも必ずしも合理的ではない部分もありますから、一通り全部メニューを揃えることで、どんな時代が来ても、介護と医療で最低の収益が確保できるように備えておく必要があります。
岡部 サービス形態が多様化して増えていくのはよいことだと思いますが、効率にも気を配らないといけませんね。
湖山 そうです。ですから、うちは利益の極大ではなくて、ローリスク・ローリターンでよいから、一通りのメニューを全部やることで、長期的に経営を安定化していく方針をとっているのです。
岡部 法人形態として、医療法人と社会福祉法人とNPOと株式会社が、全部で27もあるメリットはどこにあるのでしょうか。
湖山 地域の環境も違いますし、施設体系も違いますから、逆に一つの法人でやると、給与体系から現場教育の仕方から、非常にロスが出てきます。この町での法人で、この町のスタッフが、その町のお年寄りを看るということに徹底していますから、何とかやっていけるのです。これを、異なる地域を一つの法人でカバーし、同じ給与体系、同じ介護の仕方でやろうとすると、逆に不合理な点がたくさん出てくるのです。
〇湖山医療福祉グループの職員教育養成方針
岡部 湖山医療福祉グループは顧客への質の高いサービスの提供は当然のこととして、そこで働く職員が気持ちよく前向きに仕事ができる環境を整えることにも力を注いでおられるものと伺っております。その秘訣をお教えください。
湖山 27の法人は、それぞれ独立した経営主体として運営していますが、すべての法人に共通のコアの部分は何なのかというと、理念と教育であると思っています。ですから、教育研修は常に合同でやるわけです。これは、ブロックを、東日本、首都圏、中部、西日本に分けて行なっています。
そのブロックのなかで、法人体系、施設体系、病院であろうが、グループホームであろうかには関係なしに、学会方式で全員が発表するのです。年2回、法人全部の決算を株主総会のように数字を公表するのです。千葉の小生田にある外務省の研修センターをお借りして、そこで150人ぐらいが1泊2日で集まる研修会も年に何回かやっています。また、職種別に事務長が集まる勉強会もあれば、栄養士が集まる研修もあります。
岡部 それは素晴らしいことですね。ただ、そういうふうにして、全国のいろいろな施設から集められて、数字まで公表されますと、同じ仕事をしていても給料が違うことがわかって、その不満が出てくることはありませんか。
湖山 それは、あります。たとえば、同じ県内でも、病院のほうが高機能で看護師もプライドを持っていますが、実際には老健のほうが看護師の数が少なく負担は重いのです。そこで、老健の当直手当を少し高くしないと、老健にはよい看護師が集まらないといった非常に具体的な問題が出てきます。そういった違いを不快に思うスタッフが出てくれば、できるだけ転勤を認めて解決するように運用しています。法人ごとに給与体系が、東京と島根とでは大きく違うのは当然で、これは地域相場に合わせるしかありません。
岡部 どういう給料でどういう人材を集めるといった方針を、本部では策定されないのでしょうか。
湖山 そういうご質問を講演会などで最近よく聞きます。「これだけのスタッフをどうやって集めたのですか?」とか、「どうやって選ぶのですか?」という疑問をみなさんお持ちのようです。ところが、私どもにはそのような戦略はまったくありません。考えてもいないのです、私が選んだこともないのです。職員が、私どもを選んでくれて、来てくれただけのことです。もちろん、募集活動はしていますが。
岡部 介護のような生き甲斐のある仕事をしたい人が集まるわけですね。
湖山 はい。来てくれて、そして働いてもらって、大変ハードな現場でも、諦めずに辞めずに残ってくれた人が私どもの資産です。決して、私どもが選んでいるわけではないのです。職員のほうが、私どもを選んでくれるのです。
岡部 それは、よく分かります。人材確保の面では、そんなに無理をしなくても、やりたい人が集まって来るというのは大変羨ましい企業だと思いますが、今でも結構応募者は多いのでしょうか。また、この分野では、離職率が高いことが問題になっていますが、湖山グループでは、あまり痛痒を感じておられないのでしょうか。
湖山 私どもには地方での事業が多いということ、それから、わりと職員たちにやりたいことをやらせているという利点があります。つまり、医療保険、介護保険の中であれば、地域ニーズさえあれば、法人単位、施設単位でやりたい事業を決めてよいのです。本部から、戦略的に、どこでもデイサービスをやれとか、回復期リハビリテーションを全部やれといった指導はしません。
地域ニーズのなかで、言い換えれば、いわばほかにやり手がない介護サービス分野で、許可がとれて、職員たちがぜひやりたいことをやるのですが、実は、これが一番マーケットに合っているわけです。職員もやりたいということは、モチベーションが高く、能力もあるわけです。それを、全国一律のメニューで強制するよりは、自由にやらせるのが、事業としても一番安全なわけです。
皆さんがお考えのトップダウンの経営とは、順序が逆なのです。嫌がる職員を集めて、無理矢理教育してやらせるのでは経営者が考えた通りにはなりません。でも、結果的には、全体として健全な経営ができて、きちんと給料が払えて、法人として赤字にならなければ、それでよしとして、自由に任せてきました。それが、結果としてこのようになっただけです。
岡部 素晴らしい人材養成手法ですね。湖山グループでは、それぞれの施設の経営を任せるだけではなく、マネージャーが自分で事業をやりたいと言ってきたら、スピンアウトを許しておられると伺っていますが。
湖山 そうです。たとえば、新潟の社会福祉法人の隣にクアハウスがあり、その経営が民間委託に出されました。これもぜひ私どもでやりたいが、社会福祉法人での吸収はなかなか難しいので、職員たちが10万円くらいずつお金を出して有限会社を設立、半分は私個人で出して、町立病院の周りでクアハウスの運営を始めたような例です。
岡部 そういうスピンアウトも結構増えているのでしょうか。
湖山 そうです。山形には「テイクオフ」という会社がありますが、私どものトップクラスの病院・老健の幹部が、小規模の高齢者アパートをやりたいと言ってきたので、私もお金を出して、その幹部が社長になりました。3年経って、アパート10棟で、一応黒字になっています。
能力があって、自分でやりたいという人は必ずいます。そういう人材がただ辞めてしまうよりは、逆に私がお金を出して、グループの周囲に新規ベンチャーが生まれるわけです。
岡部 ソーシャルベンチャーのアントレプレナーは頼もしいですね。
〇湖山医療福祉グループの今後の経営課題
岡部 湖山医療福祉グループの特徴は、グループとしての連携をとりながらも、従来の医療・介護・福祉の枠組みにとらわれず、地域の実情に即した施策を打ち出し、常に新しい発想を積極的に取り入れているところにあることがよくわかりました。グループ経営上の今後の課題、問題点などをお聞かせ下さい。
湖山 私どもが選ぶのではなく、選んでもらうという基本方針は、お客さまについても同じことです。最近、ようやく「患者さまに選ばれる病院になりたい」と言われる経営者も出てきましたが、お話を聞いていると、どういう患者さまを選ぶと利益が上がるのか、軽くて病気がないほうを選んだほうがよいとか、逆に、重度の患者を選ばないと収益が上がらないから軽い人は断るとか、つまり、儲けを念頭に相手を選ぶのが経営ノウハウのように考えているのです。
私どもは、それは違うのではないか、軽い方でも重度の方でも、短期でも長期でも、来られた方にサービスを提供したうえで、結果的に法人が赤字倒産しないように、経営努力をしているだけなのです。申し上げたいのは、発想の順序が違いますよということです。それでやっていけるのかと問われると、結果的にそれでやってきたのが私どもです。
しかも、施設ごと、地域ごとに、全部、お客さまのニーズが異なり、それに応える経営ノウハウも違いますので、湖山グループとしての共通のやり方でもって、全体をマネジメントしていくことはあり得ないのです。
岡部 地域差はあっても、やはり、介護報酬として、全体の平均のレベルが低すぎるというのは、その通りでしょうか。
湖山 その通りです。でも、これまでは、施設ごとに工夫をしてやってきました。地方の場合は、ほとんど借地です。しかも、福祉関係ということで借地料を安くしていただいています。建て貸しもあります。建築単価も、入札で相当の低いところを選びます。職員のモチベーションを上げるためには、教育研修にはお金を惜しみません。それから、決算も職員にだけでなく、外部にも公開します。そのうえで、利益の1/3は決算賞与まで含めて職員に配ります。1/3は事業団などからの借金返済に回します。1/3は新しい社会福祉法人を作ったりするために寄付します。このオープンな経営の中で、職員たちが納得してくれてモチベーションを高めた結果としてやってこられたのです。だから、経営というより、私どもは、初期の医療生協とか高齢者生活協同組合みたいな感じの雰囲気です。
岡部 そうすると、コムスンの事業を譲り受けるといったことには、まったく関心がないわけですね。
湖山 関心がないというのではなく、医療保険や介護保険に携わる企業の社長が飛行機を買ったり、フェラーリを何台も買ったりするのはとんでもない。それから、株主に配当できるほどの利益を生むまっとうな経営は介護分野では長期的に許されないものと見ています。
岡部 介護事業では利益をあげて配当するような経営モデルはあり得ないということですね。
湖山 それほどの利益を残すようなことは、この分野では、現実的に不可能です。介護保険からの報酬で利益が出ると発表されると、必ず報酬が大幅に引き下げられます。たとえば、ニチイ学館が介護器具のレンタルで何十億円という利益を出したと発表されると、それは儲けすぎだといって、厚労省は改定時にドーンとレンタル料を落とします。すると、ニチイ学館の利益は半分になりました。もちろん、赤字になることもあります。デイサービスについても、同じようなことが起こりました。
厚労省は、利益セクターが見つかると、「そこは儲けすぎだ、けしからん」と言って、報酬を全部落としてしまうので、介護や医療サービス事業には大きな政策リスクがあります。したがって、ここが儲かると思ってそこに特化すると、最初はよくても、必ず赤字に転落します。一分野に特化することは避け、つねに新しい利益セクター、新しい施設体系、新しいサービスを手掛けていかないと、7年で赤字に転落してしまうのです。
10年という説もありますが、私は7年周期説をとっています。法律ができて、なんとか採算が合いそうだというので始めると、申請に1年、建築に1年、オープンに1年掛かり、できた頃には、競合者が出てきて、3年も経つと点数が下ってしまうのです。ですから、比較的早く、手掛けたほうが結果的には、先行利得を得ることができます。
岡部 その状況は、よく分かります。
湖山 それと、介護サービス事業では、まともに経営していれば、経営ノウハウで利益率を上げるといったことはできないのです。サービス・メニューを、儲かるところに特化すると、それに転換するためのコストがかかります。「お前のところは、在宅やめて施設をやれ」、「施設をやめて、在宅にしろ」といった転換には、すごいコストが掛かります。また、モチベーションが下がります。
地域拠点全体として毎年少しずつの健全成長し、地域のプレゼントを維持するために、年15%伸びているのであれば、病床を増やそうが、リハビリをやろうが、デイサービスをやろうが構わない。自然に成長する中で、つねに新期雇用も増やして来ました。今年は新卒を600人採用しました。そうすると、平均年齢が上がらないわけです。この分野は成長期で、まだ楽なわけです。
岡部 総職員数4,000人弱で、600人の新規採用というのは、すごく大量ですね。
湖山 そうです。これができたのは、事業所が全国各地にあるからです。これが、もし東京だけであったとしたら無理です。それから、病院だけであったらやはり無理です。新卒の多くは、介護福祉士たちです。介護福祉士の養成学校で、私どもは、わりと開放的で明るくて、自由にさせてくれるという先輩の評判が定着してきました。今までも、学校を経由して、各地区で採用して来ましたので、首都圏の老健や特養でも、必要なだけ採用できて、1~2カ月でフル稼働しています。
岡部 重点投資ではなく、百貨店方式で分散した先行投資がポイントということは、よく分かりましたが、これからの高齢化の加速でニーズが出てくるであろうと思われる分野はどのあたりでしょうか。
湖山 一つは、やはり住宅部門です。有料老人ホームは、資金力、営業力の強い大資本の企業がやるでしょうから、私どもは、医療法人病院や老健に特養を併設するとか、株式会社の老人ホームを併設する方向です。許可枠の問題もありますが、大型の特養とか老健とかはなかなかできないので、私どもが考えているのは、小規模多機能住宅、ミニ特養、ミニ老健、ショートステイ、ミドルステイの大型化、こういったものを複合的に組み合わせた中規模多機能と私が名付けた施設です。
岡部 中規模多機能介護施設ですか。
湖山 これは、部屋代の比率が高いケアハウスのような形態ですね。いろいろな機能を備えた全体で100床前後になるような中規模多機能施設です。あまり小規模なものは採算が合いませんから、地域ニーズを満たして、かつ結果として赤字にならないような施設体系というのは、私どものオリジナルです。オリジナリティーといっても、いろいろ組み合わせただけですが。
岡部 そうすると、グループホームなどは、頭打ちといった感じでしょうか。
湖山 グループホームも必要ですが、18床のグループホームを単体で作るよりは、50床ぐらいの医療法人老人ホームに、30床ぐらいのミドルステイができる施設を合わせた規模が理想です。グループホームを否定するのではなく、多くの施設体系ができてきましたので、グループホームだけにこだわることはないということです。中規模多機能にグループホームを付けることも可能です。要は、ある程度の事業規模がないと採算が合わないということです。これからは、小規模多機能が点数も上がってよいだろうとか、もうグループホームはダメだから、大型の高級老人ホームに特化する、といったことではありません。
岡部 湖山グループにはオンリーワンの一番店が多いということですが。
湖山 それは、そうです。ある町に、一つの老健だけしかないというような町村が多いですから、必然的に一番店、オンリーワンなのです。それは、もともと、やり手が少ないようなところに作ること自体に大変価値があると考えたからですが、実際には苦労をしました。たとえば、瀬戸内海に浮かぶ離れ島にある唯一の老健などは、スタッフの確保だけでも大変でした。ですから、創ること自体に価値があって、生き残れるオンリーワンです。皆さんは、ブランドを確立してオンリーワンとかナンバーワンとか言われるのです。マキシムや青梅慶友病院、山王病院は全国に一つしかないオンリーワンです。それと同じことをやろうと思うと必ず負け組に入り、現実的ではありません。
その気持ちは分かるけれども、私どもは、いわば東大並みのものを作ろうというのではなく、どの町にもあるような小学校、中学校をつくろうという気構えです。それは決して有名ではなく、東大進学率県一番ではないかもしれない。でも、その町の子供たちにとっては、唯一の自分の母校であり、そこで働いている先生にとっては、自分の大事な大事な教え子たちであって、自分の人生の唯一の小学校です。働く人も、そこで育つ人も。私どもの施設も、人生の最後の5年間ぐらい過ごしていただけるようにと目指す、人生最後の幼稚園みたいなところなのです。そこで働く人も、そこの私どもの施設で暮らしてくださる方にとっても、人生唯一の思い出の場なので、その価値はどこにも負けないのです。
岡部 それが、一番大事なポイントでしょうね。
湖山 私どもは、綺麗な蘭の花ではないけれども、野に咲くれんげ草、野の花の群だろうと考えています。でも、その野の花にも美しさはあるよということです。やり甲斐があるわけだから、私どもも十分プライドを持ってやっていけるし、無名でもよいではないか。湖山医療福祉グループでは、ブランドは作らない、カリスマもいらないということです。
それから、職員全員に配っております「職員行動指針」「こやまケア行動指針」というのがありますが、これも私が考えたのではなく、実は、研修会で職員たちが出したたくさんの指針の中から10ずつを選んでまとめただけです。みんなの蓄積が少しずつ、25年間たまってきたものには実直性があります。
ですから、湖山グループには特別なことは何もないのです。でも、湖山グループのような組織体が、世の中にそうたくさんはないというのが、私の正直な感想です。
岡部 確かに、ないですね。ぜひ一度、湖山グループの研修会を覗かせていただきたいものです。本日は、ありがとうございました。
(2008年7月10日、医療経済研究機構発行「医療経済研究機構レター(Monthly IHEP)」No.166、p1~13所収)