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「このままでは衰退」シティーに直言! 簡素化/活力/包容力示せ

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住銀の岡部専務、英産業省も傾聴

【ロンドン支局】「公認会計士は製造業のトップに不適」と盛田昭夫ソニー会長が英国産業界に苦言を呈して話題を呼んだが、今度は岡部陽二住友銀行専務(欧州駐在)が「現状のままではシティーの将来は危うい」と問題点を指摘、注目されている。シティーは英国の心臓部であり、同国金融界では欧州共同体(EC)市場統合後のシティーのステータスを不安視する見方が広まっている時期だけに、英国貿易産業省(DTI)も強い関心を示し、岡部さんに手紙を寄せ、日本の金融界の見解取りまとめを依頼した。

岡部さんの問題指摘は、DTIやイングランド銀行(BOE=英国中央銀行)も参加する「ブリティッシュ・インピジブルズ」 の日本部会の席で行われたもの。EC市場統合による金融制度の統一や他の欧州諸国の金融市場改革が進展する中で、シティーが現在のまま過去の栄光に頼っていだのでは世界の金融市場とじての相対的魅刀は早晩失われることになると警告した。これを避けるために、シンプリシティー(簡素化)、ビバシティー(活力)、キャパシティ(包容力)の三語で象徴される課題を克服でぎなければシティーの将来は危ういと提言した。

 これらの第一では、シティーがこれまで繁栄してきた最大の魅力は為替管理の撤廃やビッグバンによる金融自由化などを先取りし、簡素かつ自由な点にあったが、最近は逆に種々の規制が強化され、事務手続きが極めて複雑多岐にわたり、金融センターとしての魅力が失われていること。

 第二は6070年代にかけてシティーは欧州市場の中心として先物取引、スワップ債などどんどん 新しい商品を導入して活力に満ちていたが、今やその地位は完全に米国に移ってしまった。

 第三は相互主義などの観点から、例えば日本の地銀がロンドン事務所を支店に昇格させようと思うと十年もかかる点を指摘。また事務所経費もブりュセルの5倍、フランクフルトの2倍もかかるようでは次々とシティーから逃げていかざるを得ず、広い意味でのインフラを整備して再びシティーに呼び戻すような包容力を持つぺきだというもの。

 こうした岡部さんの主張はかねてからの持論であり、また各方面から同様の問題指摘はある。

 しかし岡部さんは「英国の現状をみると、シティーの相対的体質は弱つてきているうえ、通貨(ポンド)が弱い、銀行が弱い、自国製造業を放棄し、産業基盤が弱くなっている。こんな国で金融市場だけが栄えるのか」と手厳しく、逆にこのことが関係者の共感を呼んでいるようだ。

(1992229日付け、日刊工業新聞コラム所収)

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