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「継続は力なり」を実感 岡部 陽二

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 満九十歳を超えたばかりの本年5月に真向法協会から「真向法・十段位」の免状を授与されました。免状には「心技体ともに入神と認めます」とあり、面映ゆい限りですが、四十年近くを要した長年の念願が達成されて、一息ついております。

 「真向法体操」とは、次の四つの屈伸運動を組み合わせた下半身のストレッチ体操です。

 第一体操は、「楽座(がくざ)」と呼ばれるあぐらに似た座り方をし、お辞儀の要領で体を倒していきます。両足を揃え、足裏を真上に向けて、両ひざはぴったりと床につけます。

 第二体操は、両足を揃えて、まっすぐに伸ばし、上体を傾斜させていきます。足首を鋭角に立てたうえで、股関節を軸に背筋をまっすぐに伸ばします。

 第三体操は、両足を一三〇度くらいに開き、足首を鋭角に立てます。正面を見たまま、両手を前について、腹から胸を床につけます。

 第四体操は、正座よりも少し脚を外に開けた座り方から、上半身を後方に倒していきます。倒れたまま、両手を真っすぐに伸ばし、腹式呼吸をします。

 この四つの体操を毎日十分間ほど行なうだけですが、私はこれに肩甲骨や頚を回転させる運動と正座して行う深呼吸を加えて二十分くらいを費やしています。

 ポイントは、この簡単な体操を毎日欠かさず続けることです。まさに「継続は力なり」を地で行く生活習慣の確立です。

 真向法の最大のメリットは、何時でも、どこでも、誰でもできるという点です。ジョギングが体によいと言っても、雨の日などにはやめた方がよいでしょう。水泳にしても、プールまで出掛けなければなりません。

 ところが、真向法は畳一畳のスペースさえあれば、どこででもできます。旅行中でも欠かさずでき、「今日はやめておこう」というエクスキューズが見当たりません。

 真向法とは、一九三三年に長井津(わたる)先生(一八八九~一九六三)が考案されました身体機能を向上させる体操で、九十年を超える歴史を有しております。

 大成建設前身の大倉組のサラリーマンでした長井津先生は、四十二歳で脳溢血に倒れ、半身不随となられ、苦悩に開け暮れる中で、生家に伝わっていた経典を繙かれていたところ、序説の最後の方に「頭面接足礼」という字句を発見されました。これは「座ったままで行うお辞儀のこと」であろうとヒントを得られて、真向法を考案され、健康を回復されました。そこで、この体操法を健康を求める少しでも多くの人々に普及させようと思い立たれたのが始まりです。

 「真向法」なる呼称は長井津先生が詠まれた「真澄空 唯一つなるみ光を 真向仰げ 四方の国人」という和歌に由来しています。宗教との関係はまったくありません。

 長井先生の遺志を継ぐ後継者にも恵まれまして、一九六九年には真向法の全国への普及・啓発を目的とした社団法人真向法協会が設立され、二〇一一年には内閣府認定の公益社団法人として、段級位の審査・免状授与が行なわれております。

 段級位は柔道や剣道と同じ仕組みです。五級から五段までは毎年昇段審査を受けられますが、六~八段は二年ごと、九・十段は三年間に一度しか昇段審査を受けられません。したがって、技量面ではパスしたとしても十段位を授かるには最低でも二十年、通例三十年を要します。このように継続した修練が昇段の条件となっておりますので、十段位を授与されるのは年間数人に限られております。 

 以前は政治家や経済人の中にも真向法の信奉者が多くおられました。なかでも人間学を唱えられた故安岡正篤先生は「生命はその機能を発揮すればするほど、長井先生がよくいわれていたように柔軟になり、抵抗がなくなる。意識からいうと、虚であり、無ということだ。」と真向法の哲学的考察を試みられました。

 また、二〇〇九年に九十九歳で亡くなられた鈴木俊一元東京都知事は若さをアピールすべく知事選で真向法を披露され、亡くなられる直前まで車椅子に乗って稽古に来ておられたという逸話を残しておられます。

 住友銀行にも真向法の実践者は多数おられますが、十段位保有は数年前に取得されました吉田博一さん(昭和三十六年入行)と私だけで、退職後に真向法協会の理事として広報・宣伝に尽力されておられます征矢光生さん(昭和五十三年、平和相互銀行入行)が今年取得される由です。

 私の真向法との出会いはロンドン在勤中の四十~五十歳代を通じて終始腰痛に悩まされていたことにあります。振り返ってみますと、車ばかりで移動する生活がよくなかったようです。鍼やマッサージなどいろいろ試しても治らないので困り切っておりましたところ、職場の同僚から真向法を熱心に勧められて、朝日ソノラマのレコード盤を買ってきて、見よう見まねの自己流で始めました。一九九二年に帰国後は証券経済倶楽部での研修会があり、これに参加したのが機縁で今日まで継続できました。

     老いてなほ四肢やはらかや雲の峰    陽二  

(2026年1月発行、旧住友銀行OB会誌「銀泉」171号、p2~3所収)

追記;2025年11月15日付けにて、日本棋院より囲碁七段の免状(下掲)を頂戴いたしました。

免状を取得しました記録を遡れば、次のとうりです。 

 1、1983年8月16日; 初段

 2、1994年8月16日; 二段

 3、1997年1月1日;  四段

 4、2012年12月25日; 五段 

 5、2025年8月16日; 六段

 6、2025年11月15日; 七段

これも「継続力なり」の成果かと秘かに自負しております。

     免状をいただく汗の卒寿かな    陽二



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囲碁 七段免状(日本棋院)の公式文言は次のとうりです。
【原文】貴殿棋道執心所作 宜敷手段益妙達上 手之域依之 七段令免許畢仍而 免状如件
【読み下し】きでん きどうしゅうしん しょさ よろしく しゅだん ますます みょう じょうずの いきに たっす これにより しちだんを めんきょ せしめおわんぬ よって めんじょう くだんのごとし
【現代語訳】あなたは囲碁への強い情熱を持ち、熱心に研鑽を積み、 巧みな技法をますます磨き上げ、上級者の域に達しました。 よって七段を免許し、この免状を授与します。



「銀泉」誌継続は力なりを実感」銀泉171号.pdfはここをクリックください











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